公開日時 2025年09月09日 05:00更新日時 2025年09月09日 13:47

卓越 情熱のバイオリニスト 松田ヴァレリアさん 世界で活躍 人材育成も アルゼンチン<アジア・海外通信員>
アルゼンチンを拠点に活動するバイオリニストの松田ヴァレリアさん(提供)

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琉球新報朝刊

 ブエノスアイレスの活気ある音楽シーンで、松田ヴァレリアさん(46)は多彩かつ情熱的なアーティストとして広く知られている。卓越したバイオリニストであり教育者でもある。日系人としての誇りを胸に、アメリカや香港など世界各地でアルゼンチン音楽を奏でてきた。

 父は名護市出身、母は本部町出身で、松田さんはアルゼンチンで生まれた。幼い頃に兄のリコーダーを手に取って遊んだことがきっかけで音楽に親しむように。母の勧めで本格的に学び始め、ロペス・ブチャルド国立音楽院などの名門で訓練を受け、コロン劇場アカデミック・オーケストラに参加し腕を磨いた。

 地下鉄で偶然出会った、タンゴのギタリストとの交流が一つの転機となった。クラシック音楽の厳密さとは異なり、タンゴは自由な表現と自己のスタイルを求める音楽だった。二つの異なる音楽性を行き来する経験が松田さんのキャリアに独自の個性をもたらし、技術と情熱が融合した演奏スタイルを生み出している。

 これまでに室内楽やポピュラー音楽のグループなど多様なシーンで活躍してきた。タンゴグループ「ラス・デル・アバスト」の一員として、アメリカやヨーロッパを巡るツアーに参加した。近年は香港のタンゴフェスティバルに招かれ、その際には日本の親族も訪れている。

 現在はアストル・ピアソラ音楽院で教授を務め、若い日系人世代の育成にも力を注いでいる。若者たちに対して「音楽で生計を立てることは可能だ」と強調する。自身の経験から、努力と規律こそが夢をかなえる土台であると説き、困難に直面してもあきらめない姿勢を力強く示している。

 2015年には若手日系優秀賞、17年には在アルゼンチン日本大使館から功労賞を受けた。いずれも日本人会の推薦による栄誉である。「労働の文化と、自分の情熱にかける難しさこそが最も重要で、やりがいのあることである」という信念を持ち、その理念を一貫して音楽活動に反映させてきた。

 西洋音楽を中心に活躍してきたが、自身のルーツにも深い敬意を払う。日系シニアクラブでは「ふるさと」や「島人の宝」を演奏した。その音色と情熱は国境を越え、沖縄コミュニティーに深い誇りをもたらしている。

(大城リカルド通信員)

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