次に登場するのは、パンジーモチーフのティアラ。メゾンのアイコニックなヘリテージピースの一つでもあるこの作品は、1850年代に職人頭であったジャン=バティスト・フォッサンにより製作された。有機的なラインと立体感でパンジーの造形美を再現したデザインは、驚くほどにリアル。3つの取り外し可能なパーツから成るトランスフォーマブルな仕様で、当時、船旅に出る女性顧客たちが持ち運びできるように工夫されたとも言われている。

パンジーは踏まれても生き返る強さを持ち合わせた花で、フランス語では「思考、思想」を意味する。この作品は、女性たちの強さ、聡明さ、知性を象徴し、それらを称えているものなのだ。

1908年製作。翼をモチーフにしたティアラ

最後は、1908年に製作された双翼なティアラが展示。圧巻の存在感を放つこの作品は、当時NYのホイットニー美術館の創設者でファッショニスタ的存在として知られたガートルード・ペイン・ホイットニー(旧姓ヴァンダービルト)が購入したという。数千個のダイヤモンドと、メゾンが特許を取得しているというプリカジュール技法の青いエナメルで装飾された、ダイナミックなデザインだ。

ティアラとして、またブローチとしても着用できる2WAY仕様になっており、自由に羽ばたきたいと願った当日の女性たちへの想いが込められた歴史的なピースとなっている。

継承される「自然主義」の今

和紙により製作ハニカムモチーフ。

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