来年のワールドカップ開催国の一つ、メキシコとのテストマッチは日本の現在地を知る上で貴重な機会になった。結果は周知の通り、スコアレスドロー。攻めきれなかった一方で崩されることもなかった。

収穫の多い一戦だったと言える

 森保一監督は試合前日に行われた公式会見で「まずはアジア予選でやってきたわれわれの戦いをぶつけていく。そこから何ができて、さらに上げていかなければいけないのか、何が足りなくて改善していかなければいけないのかが見えてくる」と話したが、実際、課題の把握も含めて日本にとっては収穫の多い一戦になったと言える。

 まず、ケガ人が続出しているセンターバックで、3バックの中央を任された渡辺剛が高水準のプレーを披露したことが挙げられる。クサビのパスやロングボールに対してはタイミングよく前に出てチャレンジ。5年前の対戦でゴールを決めるなど日本を苦しめた長身FWラウル・ヒメネスと互角以上に渡り合い、最後まで仕事をさせなかった。

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 ゴールにはつながらなかったものの、堂安律へロングパスを通してチャンスを演出するなど、攻撃の第一歩としての意識も高かった。冨安健洋、伊藤洋輝、町田浩樹、高井幸大らケガで招集外だったCBが戻ってきても、メンバー争いに食い込む可能性を示した。

ボランチ鎌田と上田のポストワークの可能性

 攻撃面では、ボランチ起用された鎌田大地のクレバーなプレーと上田綺世のポストワークが収穫と言えるだろう。試合前の取材ではケガの状態が「万全ではない」と話していた鎌田だが、これまでシャドーで先発するケースが多かった中でこの日は所属するクリスタルパレスと同じポジション、ボランチに入った。

 密集を縫うように通す縦パスの質が高く、チームを何度も前進させた。また、状況に応じてスペースを使う動きも良質で、ボールの引き出しと展開力はさすがのひと言。元来、ボランチでプレーする意欲を見せていたが、守田英正や田中碧が不在のチームで、攻撃を機能させる存在だと証明した。

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