フランスのバイル政権は、8日にも崩壊する可能性が高い。フランスの巨額債務削減を進めようとするバイル氏の姿勢が、政権の命取りになる見込みだ。
バイル氏は、自身の予算案に対する議会の支持を得るため、国民議会(下院)で信任投票を実施する方針を打ち出したが、戦略が裏目に出る可能性が高い。国民議会では、野党勢力がバイル氏の少数与党に対抗する動きを強めている。
バイル首相
Source: Bloomberg
バイル氏はパリ時間午後3時から政策演説を行う予定で、その後、国民議会において各政党による討議が続く。信任投票は夜に実施され、結果は午後8-9時に判明する見通し。信任投票を巡り注目すべきポイントは以下の通り。
■信任投票の理由
バイル首相はフランスの財政赤字を2026年までに国内総生産(GDP)比4.6%に抑えるという計画への議会の支持を取り付けるために信任投票を実施しようとしている。
今年の赤字見通しは5.4%で、計画を達成するための予算案には歳出削減と増税を合わせて440億ユーロ(約7兆6000億円)規模の措置が盛り込まれている。
■政権崩壊後の選択肢
バイル首相が信任投票で敗れた場合、マクロン大統領は新たな首相を任命するか、国民議会を解散して総選挙に踏み切るという選択肢がある。一部の政党からは大統領の辞任を求める声も出ているが、マクロン氏は再三にわたり辞任を否定している。
■市場の反応
2024年6月にマクロン大統領が突然の解散・総選挙に踏み切り、現在の政治的行き詰まりを招いて以降、フランスの代表的株価指数CAC40は4.1%下落している。欧州全体のストックス欧州600指数が4.9%上昇なのと対照的だ。
10年物フランス国債とドイツ国債の利回り格差は78ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、バイル氏が信任投票実施を表明する前の約70bpから拡大している。
■フランス政治が混迷する理由
前回の総選挙の後、国民議会は極右「国民連合(RN」、左派「不屈のフランス」、社会党の3勢力が拮抗し、政治運営は極めて困難な状況にある。いずれもバイル政権に不信任票を投じると表明しており、政権側にはほとんど望みが残されていない。
■今後の展開
バイル首相が退陣に追い込まれた場合の対応について、マクロン大統領はこれまで公の場で言及を控えている。ただし、事情に詳しい関係者によれば、大統領は国民議会の各党間で合意を模索し、新たな首相を任命する方針だという。9月18日には2026年度予算案に反対する労働組合の全国ストライキが予定されており、それまでに新政権を発足させる必要があると関係者は述べている。
新たな首相の人選は容易ではない。事情に詳しい関係者によれば、マクロン氏にとって理想的な候補者とは、中道勢力をまとめつつ社会党との協力関係を築いて法案を通すことができる人物だという。
マクロン氏には再び国民議会を解散する選択肢も残されているが、新たな議会選挙が実施されれば、大統領が既に弱い立場にある下院で、さらに影響力を失う可能性がある。
原題:France’s Premier Poised to Fall Amid Budget Fight: What to Watch(抜粋)
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