フランスでは8日、バイル内閣の信任投票が国民議会(下院)で行われる。バイル首相は退陣に追い込まれる可能性が高く、市場は結果を織り込み済みと思われる。フランスの政治不安に伴う投資家の真のリスクは、むしろ信任投票が終わった後に予想される。
バイル政権は今年7月、第2次大戦の戦勝記念日(5月8日)など祝日の2日廃止を盛り込んだ総額438億ユーロ(約7兆6000億円)の財政健全化策を示し、政治的緊張が再燃。支出削減と増税に対する野党の反対を受け、首相は信任投票で支持を固める賭けに出た。
バイル首相が信任投票を求めると8月25日に表明して以降、CAC40種指数は、欧州株の動きを広く反映するベンチマークを上回るペースで下落し、フランス10年国債とドイツ国債との利回り格差(スプレッド)も拡大した。
だが、今後数週間から数カ月にかけて起き得る展開の方が、むしろ大きなリスクを伴う。フランスでは財政再建の失敗が続き、2024年初め以後三つの内閣が誕生したが、4つ目の内閣が少しはましになる兆しは見当たらない。
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投資家は今後、予算を巡る数カ月の膠着(こうちゃく)や再度の解散・総選挙の可能性、マクロン大統領への執拗(しつよう)な退陣要求に直面せざるを得ないだろう。
それらは企業・消費者信頼感にとって有害な組み合わせであり、銀行株や内需関連株を圧迫しかねない。財政赤字を抑制できなければ、国債利回りへの上昇圧力も続く恐れがある。
こうした状況下で、格付け会社がフランスの格下げを決定するリスクを複数のストラテジストが既に警告している。フィッチ・レーティングスは12日、DBRSは19日、ムーディーズ・レーティングスは10月24日、S&Pグローバル・レーティングは11月28日にフランスのソブリン格付けの見直し結果を公表する予定だ。
ティケオー・キャピタルの資本市場戦略責任者ラファエル・チュアン氏は「株価や債券相場が急落する転換点が突然訪れるとは現時点で予想していない。むしろ漸進的な下落が長く続く可能性が織り込まれつつある」と分析する。
マクロン大統領が2024年6月に解散・総選挙の実施を発表して以降、今の政治的膠着が続き、CAC40指数はこの間、4.1%下げた。ストックス欧州600指数の4.9%上昇、ドイツDAX指数(配当を除く)の24%上昇とは対照的だ。フランス株はかつてドイツ株に対し割高な水準で取引されていたが、今や逆転した。
TP・ICAPヨーロッパの株式セールス責任者トマス・エレーヌ氏は「フランスへのエクスポージャーを減らし、イタリアとドイツを増強するフローが多く見られる」と指摘する。
ティケオーのチュアン氏は「顧客からの反応を見る限り、フランスに恒常的なリスクプレミアムが付くという認識を彼らは受け入れつつある」との認識を示した。
原題:France Political Mess Poses ‘Long-Lasting’ Risk to Stocks, Bonds(抜粋)
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