日本がブラジルやカナダから原油の購入を増やす可能性はある?原油タンカー=イメージ(写真:Sven Hansche/Shutterstock.com)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=63ドルから66ドルの間で推移している。ロシアやイランなどの地政学リスクが意識され、価格の上限は先週に比べて約1ドル上昇している。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ブルームバーグによれば、石油輸出国機構(OPEC)の8月の原油生産量は前月比40万バレル増の日量2855万バレルだった。増加の過半はサウジアラビアが占めた。前月に比べて23万バレル増加し、日量960万バレルだった。
OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは、9月7日に閣僚級会合を開く予定だ。日量220万バレルの協調減産の解消を9月で完了するOPECプラスは、10月の原油生産量を据え置くとの見方が一般的だ。原油価格は今年初めから10%近く下落しており、さらなる増産でその傾向が強まることが予想されるからだ。
だが、違う見方も出ている。ロイターは9月3日「OPECプラスは日量166万バレルの協調減産についても1年以上前倒しで解除し始める可能性がある」と報じた。
OPECプラス、特にサウジアラビアは、価格が下落するリスクを承知の上で、減産で奪われた原油市場のシェアの回復に躍起になっているのかもしれない。
今週の原油価格を下支えしたのは、ロシアを巡る地政学リスクだった。
市場では「ウクライナのドローン(無人機)攻撃により、ロシアの原油生産などの減少が続く可能性が高い」との認識が広がっているからだ。一方、米国の圧力によりインドのロシア産原油の購入が減少する可能性は低くなっている。
インドのプリ石油・天然ガス相は1日付の現地紙への寄稿で「インドはロシア産原油の輸入で不当な利益を得ていない。ロシア産原油はイラン産原油のような制裁の対象ではない。インドがロシア産原油を大量に購入したことが市場の安定に寄与し、原油価格が1バレル=200ドルに高騰する事態を防いでいる」と米国の主張に真っ向から反論した。
WACOCA: People, Life, Style.