9月5日(金)にアメリカで2025年8月の雇用統計が発表される。米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策運営に影響を与える重要指標で、市場関係者の関心は高い。この記事では、QUICK Money Worldの関連記事を中心に雇用統計のスケジュールや市場の予想などを解説する。

アメリカの雇用統計とは?

米国の雇用情勢を調べた経済指標のこと。失業率、非農業部門雇用者数をはじめ、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数などの業種別雇用者数、週平均労働時間、平均時給などが米国労働省から発表される。失業率と、非農業部門雇用者数の増減は特に注目される指標の一つ。通常、翌月の第一金曜日に発表されている。

雇用統計の主な内容には、「非農業部門雇用者数」があります。製造業やサービス業など農業以外の産業で、前月からどれくらい雇用者が増えたかを示しています。増加していれば、雇用が順調に増え、経済が拡大していると判断されます。このほか、雇用統計には働きたいが実際には職がない人の割合を示した「失業率」や雇用者の賃金がどれくらい伸びているかを示す「平均時給の伸び率」などがあります。

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雇用統計はなぜ重要?

雇用統計は米国全体の雇用情勢を総合的に把握できる指標で、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を決める際の重要な判断材料となっている。

労働市場の流動性が高い米国では、景気動向によって就業者数が大きく変動する。米連邦準備理事会(FRB)がその使命に物価の安定とともに「雇用の最大化」を掲げていることもあり、金融政策を占ううえでも重要性は高い。

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雇用統計は、いつ発表される?

8月の米雇用統計は、9月5日(金)の日本時間21時30分に発表される。

 

市場の予想は?

8月の米雇用統計について、市場では非農業部門の雇用者数の伸びは前月(7万3000人増)からやや回復するものの、失業率は悪化が予想されている。

ダウ・ジョーンズ通信によると、8月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びが前月比7万5000人、失業率は4.3%と前月(4.2%)からの悪化が予想される。

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8月の雇用統計は、9月16~17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定を占ううえで最重要の指標となりそうだ。

前回7月の雇用統計は非農業部門の就業者数の増加幅が市場予想を下回ったほか、5、6月分が大幅に下方修正されるなど労働市場の軟化を明確に示す結果となった。8月下旬の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」の講演でパウエルFRB議長が9月に利下げを再開する可能性を示唆したこともあり、市場の関心は9月の利下げの有無よりもその幅、さらに年内の追加利下げの回数に移っている。

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株価・為替はどうなる?

今回の雇用統計が労働市場の一段の悪化を示した場合、市場では景気への懸念が高まる展開もありそうだ。為替については、利下げ観測の高まりとともに円買い・ドル売りが増えやすい。米経済の先行き不透明感が強まると、株安の要因となる可能性もある。

パウエルFRB議長は米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で労働市場の下振れリスクが高まっているとして、利下げの再開を示唆した。8月の雇用統計が予想を下回るなど、労働市場の一段の悪化を示せば、市場では景気への懸念が高まる展開もありそうだ。

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8月の米雇用統計で再び非農業部門の就業者数の伸びが市場予想を下回ったり、失業率の悪化が示されたりすれば、米利下げペースが速まる可能性が意識され、円買い・ドル売りが勢いづくことが想定される。

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三菱モルガンの植野氏は「9月5日発表の8月の米雇用統計の結果次第だが、円相場は148~149円程度まで押し戻されてもおかしくはない」と予想していた。

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前回はどうだった?

7月の雇用統計では雇用者数の伸びが市場予想を下回ったほか、5月と6月の雇用者数が大幅に下方修正された。発表直後に米国債利回りは急低下、外国為替市場ではドル売りが進み、米国株は大幅に下落した。翌週の日本株にも売りが波及した。

今回(7月)の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比7万3000人増と、市場予想(10万人増)を下回った。さらに、5月と6月の過去2カ月分で計25万8000人の下方修正が入った。米ゴールドマン・サックスによると過去2カ月分の下方修正幅としては、景気後退期を除くと1968年以降で最も大きいという。

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7月雇用統計では6月のNFPが14万7000人増→1万4000人増、5月も12万5000人増→1万9000人増にそれぞれ大幅に下方修正されて労働市場の減速が示されたうえ、労働省労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー局長の解任劇につながった。

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