中国が北京で3日に行った大規模な軍事パレードを通じて発したメッセージは明白だ。中国には、新しい世界秩序を形成する武力も同盟国も野心もあると内外に伝えた。

  中国共産党の習近平総書記(国家主席)は米国の絶対的な覇権が終わりつつあるとほのめかし、ワシントンに対しては、通商対立への返答として、中国は責任ある世界的プレーヤーだとアピール。

  台湾に向けては、洗練された軍備を披露することで、中国は平和的統一を語る一方で、武力行使の可能性を常に念頭に置いていると警鐘を鳴らした。

  そして中国国民に対しては、経済の弱さにもかかわらず、貧困からの復興と国際的な大国への飛躍を支えた共産党こそが、信頼すべき正統性のある政権だと訴えた。

  式典に招待された国々に向けても、軍事力のみならず、急速な兵器の進化が発信された。習氏は演説で、中国は力や威嚇におびえず、意志を貫く偉大な国だと強調。中国と協調すれば、着実に力を備えつつある大国による安全保障の恩恵が伴うという含意を伝えた。要するに、中国につく方が得策だと呼びかけたのだ。

人権よりも力

  1945年の抗日戦争勝利から80年を迎える節目の今年、中国は軍事パレードを通じ、共産党こそ米国と並ぶ第2次世界大戦の勝者だという独自の歴史観を提示した。

  パレード直前には、天津で上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれた。議長を務めた習氏はインドのモディ首相やロシアのプーチン大統領をもてなし、中国の外交的影響力拡大を印象付けた。

  しかし、人々の記憶に残るのは、パレード当日に天安門楼上で習氏がプーチン氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と並び立った姿だろう。この3首脳が公の場で肩を並べるのは初めてで、米国中心の世界秩序に挑む姿勢を示す象徴的な演出だった。

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内外へのメッセージ

Photographer: Sergey Bobylev/AFP/Getty Images

  これに対し、トランプ米大統領は皮肉めいたSNS投稿で応じ、3氏が米国に対して「共謀」していると非難した。トランプ氏はこれまで、中国が米国の覇権に挑む可能性を軽視してきたが、このパレードの意図はまさにそこを突いている。

  米国への挑戦を象徴するかのように、イランのペゼシュキアン大統領も出席。ロシアや北朝鮮と共に「動乱の枢軸(Axis of Upheaval)」と呼ばれる構図を支える国として、中国が構想する国際的な枠組み形成に一役買った。

  これらの首脳は、独裁体制や反対意見の抑圧を共通点としている。習氏が提示しているのは、人権よりも力が正義となる未来像だ。

  東南アジアからも多くの指導者が出席した。ミャンマーやラオス、ベトナム、カンボジアに加え、マレーシアのアンワル首相や抗議デモで国内が揺れているインドネシアのプラボウォ大統領ら、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国のうち半数以上が首脳を送り込んだ。

  南シナ海における領有権問題を抱えながらも、中国の影響力が、東南アジアでいかに大きいかをあらためて浮き彫りにしている。

国家の威信

  強力な軍事力は、友好国のつなぎ留めにも有効だ。パレードでは極超音速ミサイルや防空ミサイル、無人機、ロボット犬といった新兵器が数多く披露された。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の防衛担当ベッカ・ワッサー氏によれば、中国は台湾有事を想定した装備も見せつけた。台湾海峡における封鎖や隔離作戦に役立つであろう無人海上艇や大型無人水中機、「鷹撃(YJ)」シリーズの対艦極超音速ミサイルなどだ。

  特に注目すべきは潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪(JL)3」で、これにより中国は陸海空から核ミサイルを発射できる核の3本柱(トライアド)を整えたことになるという。

  ただし、ワッサー氏は、米国が台湾を守るため介入した場合、中国が勝利できる段階には至っていないとも指摘する。それでも、米軍との力の差はかつてないほど小さい。

  軍事パレードの威圧的な演出は、国内に向けられたメッセージでもある。中国経済は米国との貿易戦争の影響で弱っており、習氏はナショナリズムをあおることで共産党の正統性を主張する方向にかじを切った。

  南洋理工大学(シンガポール)社会科学部のディラン・ロー准教授は、「国家の威信構築だ。2008年の北京五輪に非常に似ているが、今回は軍事力を通じた取り組みだ」と筆者に語った。

  中国国民も共鳴している。シカゴ・グローバル評議会とカーターセンターによる新たな調査によれば、中国人の9割が世界情勢への積極的な関与を支持。ほぼ全ての回答者が、中国はすでに世界的に強い立場で、今後5年でさらに強くなると見込んでいるという。

  米国民とは対照的だ。米国では国際的な関与へ支持が低下。ピュー・リサーチ・センターが5月に公表した調査では、世界の問題に積極的に関わることが米国の未来にとって最善と考えているのは米国民の半数足らずだ。

  こうした無気力には代償が伴う。中国による台湾侵攻を想定した米軍の戦力に関する最近のリポートは、壊滅的な損失が生じる可能性を警告。米国はインド太平洋地域における戦略を抜本的に見直す必要があるかもしれない。

  それには大規模な米軍増強も含まれ得るが、トランプ政権下で実現するのは極めて難しいように見える。

     情勢は依然として変化し得る。中国の盟友は脆弱(ぜいじゃく)性を抱えている。ロシアはウクライナで泥沼から抜け出せず、北朝鮮も経済危機に直面している。

  一方、米国は、日本や韓国、フィリピン、シンガポールといった強固な同盟・友好国を持つ。ただし、米国が覇権を維持するには、新たなアプローチが必要だろう。もはや既存の秩序に従うことに満足していない中国は、ルールを書き換えようとしている。

(カリシュマ・バスワニ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、中国を中心にアジア政治を担当しています。以前は英BBC放送のアジア担当リードプレゼンテーターを務め、BBCで20年ほどアジアを取材していました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China’s Parade Shows Who’s Calling the Shots: Karishma Vaswani (抜粋)

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