トランプ米大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)への攻撃的な姿勢は、インフレ加速や投資の抑制、米経済への信認低下を招くリスクがある。これは、金相場に強気な投資家にとって、今年最も注目される資産の一つとなった金の記録的な価格上昇を後押しするシナリオだ。

  金相場は今週、1トロイオンス=3500ドルを突破した。各国中銀による旺盛な金購入や、世界経済を巡る懸念の高まりを背景とした過去3年にわたる強気相場が、米金融当局による早期利下げの観測でさらに強固なものとなっている。

Dollar Slumps, Gold Shines | Dollar-weakening policies set to benefit gold

 

 

  金は今年に入り3割超の値上がりを記録。世界株式や多くのコモディティー(商品)、暗号資産(仮想通貨)ビットコインといった他の資産を上回るパフォーマンスとなっている。トランプ氏が一連の関税政策を打ち出し、FRBの政策への前例のない介入に動く中で、ドル安と短期国債利回りの低下が進行。大統領が目指す企業支出と個人消費の喚起、米国の債務返済負担の軽減につながる可能性もある。

  パンゲア・ウェルスのヨハン・ヨーステ最高経営責任者(CEO)は「政策の変動は桁外れで、その多くがホワイトハウスから発せられている」と指摘。「政策は意図的か偶発的かは別として、ドル安要因となっており、金にとっては好材料だ」と述べた。

  米経済と世界の金融市場の中心にあるFRBに対しトランプ氏は、クック理事の解任を試み、迅速に利下げに動いていないとパウエル議長や他の理事を繰り返し批判してきた。さらに、次期議長の指名を通じ、FRBをより従順な機関へと変える道筋を付ける可能性もある。

  FRBの独立性が保たれた状況では、インフレが抑制され、経済成長がより安定した過去数十年の経験があるだけに、トランプ氏のFRB攻撃は米経済を先行きを暗転させるとの見方が一部投資家の間で強まっている。

  最悪のシナリオとして、インフレ高進にもかかわらずFRBが利下げを強いられ、ドルが急落する展開が考えられる。そうなれば、米国債のリターンは実質的に目減りし、代替の安全資産として金の魅力が一段と高まる。

  ピクテ・アセット・マネジメントのマルチアセット共同責任者を務めるシャニエル・ラムジー氏は、「ドルは政権の政策の調整弁になる」と述べ、通貨安や意図的にドル安を招く政策に対する保険として金が選好されていとの見方を示した。

 

原題:Trump’s Attack on the Fed Fires Up Gold Bulls Betting on Crisis(抜粋)

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