英国市場を財政問題が再び揺るがしている。景気を損ねることなく財政を立て直せるのか、投資家の不安が高まっている。

  こうした緊張感の高まりを受けて、英国は最終的に国際通貨基金(IMF)の金融支援が必要になる可能性すらあるとの見解を示すエコノミストも現れた。これは行き過ぎかもしれないが、投資家が英国の長期国債を売り浴びせ、利回りが今世紀最高の水準に上昇しているのが現実だ。

  これは国債の利払いにかかる費用がいっそう膨らみ、リーブス財務相の限られた財政余地を一段と圧迫し、政治的に厳しい判断をさらに困難にすることを意味する。利払い費用だけでも、前回の財政発表があった3月以降で80億ポンド(約1兆6000億円)の追加負担が生じている。

  英財務省は3日、11月26日にリーブス財務相が来年度予算を明らかにすると発表した。リーブス氏は最大510億ポンドの財政不足を埋め合わせ、100億ポンド弱でしかない財政的な余裕を回復するため、増税か支出削減を迫られると、エコノミストらはみている。

  リーブス氏は同日の動画メッセージで、自ら設定した財政規則を守ると強調。「財政規則に交渉の余地はない。これを通じて日々の支出を厳しく管理し、インフレと借り入れコストを抑制する必要がある」と主張した。

  この発言後、朝方に再び上昇し、数十年ぶりの高水準を再び更新した英国債利回りは低下へと転じた。

  英国市場には、2022年に当時のトラス首相が打ち出した「ミニ予算」をきっかけに発生した危機の記憶がなお強く残る。これ以降、金融市場は財政政策に強力な拒否権を持つようになった。

  しかし、リーブス氏にとってのリスクは、市場の信頼を維持するための行動が、英国を財政の悪循環に陥らせる可能性だ。増税が需要と成長を抑制し、それによって税収が減り、市場の不安が強まって、一段と厳しい財政引き締めを強いられるという展開が懸念されている。

  ブルームバーグ・エコノミクスの試算では、リーブス氏が自身の財政規則において確保していた財政余地を取り戻すためには、最大350億ポンドが必要になる。

  リーブス氏に「英国債投資家は警告を発し続けている」と、ハーグリーブス・ランズダウンのマネー&マーケッツ責任者スザンナ・ストリーター氏は指摘。「不安視されているのは、財政不足を埋められるかだけではなく、それが成長を犠牲にして達成され、悪循環に陥る恐れがあることだ」と語った。

  世界的にも、一部の長期債利回りは10年余りで最高の水準に達している。国債の供給増加を踏まえ、投資家はこれまで以上に高いプレミアムを要求している。

  英国では今週、30年債利回りが5.7%を突破し、1998年以来の高水準を記録。10年債利回りも今年1月以来の水準を付けた。ポンドは2日に1.5%下げたのに続き3日朝方も売られたが、リーブス氏の発言後は上昇に転じた。

原題:Britain’s Budget Troubles Are Back Rocking the Bond Market Again(抜粋)

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