エディー・ジョーンズHCは新主将の台頭に期待しているようだ(C)産経新聞社 8月30日にラグビー日本代表(世界ランキング…

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エディー・ジョーンズHCは新主将の台頭に期待しているようだ(C)産経新聞社

 8月30日にラグビー日本代表(世界ランキング13位、以下ジャパン)はカナダ代表(同24位)とパシフィックネーションズカップの第1戦を行い、57-15で勝利した。両国の通算対戦成績はジャパンの19勝4分10敗で、ジャパンはカナダとの対戦での連勝記録を8に伸ばした(1引き分けを含む)。

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 先に行われ、1勝1敗に終わったウエールズ2連戦から、エディー・ジョーンズヘッドコーチは、

①メンタルのコントロール
②ハイボールの争奪戦
③ディフェンスシステムの再構築
④新リーダーの育成

 の4つを課題として挙げていた。この試合は選手がこの4つの課題にどう答えるのかの「答え合わせ」の場でもあった。

 ①に関して、ウエールズ戦では開始早々から攻め込まれる場面が多かったが、この試合では開始直後から流れをつかみ、先制トライに結びつける上々の滑り出しを見せた。しかし、前半20分過ぎからはピンチの場面で完全に受け身にまわってしまい、一時は同点に追いつかれるという事態を招いた。そもそも、気が逸りすぎてのオフサイドの連続で招いたピンチであり、まずは無用な反則を犯さない冷静さを培うことが必要だろう。試合全体の流れという観点で考えても、相手がランキング下位のカナダであったが故に同点で済んだが、格上のチーム相手なら、受け身にまわった時間に大量失点して趨勢が決まってしまうこともありうる。実際に昨シーズン後半はそうした試合が続いた。こうした逆境を跳ね返すメンタルの鍛錬にはまだ時間がかかりそうだ。

 ②についてもキック後のコンテストで劣勢に立たされる場面が多かった。ランキング上位国のコンテストキックはより巧妙だし、キャッチャーとして走り込んでくるプレーヤーのフィジカルもカナダより数段上だ。現状では徹底してキックで攻められた場合、苦戦は必至だろう。

 ③については一定の成果が見られたように思う。ウエールズ戦後にディフェンスコーチに就任したギャリー・ゴールド氏の指導の下、システムが整備され第一次エディー体制時の売り物であった「ダブルタックル」が復活し、特に密集近辺では相手に有効なゲインを許さなかった。ただし、これは直線的な動きしかないカナダ相手だったからこそ機能したのかもしれない。もう一つのブロックを勝ち上がってくるであろう、様々なオプションを持つフィジーのような相手に対して機能するか否かは現時点では判断がつかない。

 ④については、ワーナー・ディアンズを抜擢したが、初キャプテンでしかもジャパン史上最年少ということを考えれば、よくやっていたと言えるのではないだろうか。特に、前半で数多く犯したオフサイドを、後半ではぴたりと無くさせた修正力は評価できる。ハーフタイム中に首脳陣としっかりとコミュニケーションをとり、修正点をチームに浸透させたキャプテンシーは今後のジャパンにとって大きな武器となるだろう。

 一つ課題をあげれば、前半1トライをとった後の相手ペナルティーの場面でゴールキックを選択したところだろうか。カナダのディフェンス陣が思ったよりも強力だったという、ピッチ上の人間でなければわからない「皮膚感覚」による選択だったのだとは思うが、ジャパンの勢いを考えれば、攻撃を継続させるべきではなかっただろうか。結果論にはなるが、あそこで一度リセットされ、キックオフから始まった時間帯はカナダの勢いがジャパンを上回り、苦戦を招いた。この反省を次戦以降には活かしていただきたい。

 4つの課題以外では、相変わらずハンドリングエラーが多かった。攻撃の最中に犯したノックフォワードが6回。せっかくのチャンスを自らで断ち切ってしまうミスは相手にその場での反撃の機会を与えるだけでなく、ゲーム全体の士気を下げることにつながる。ラインアウトも3度ミスを犯した。特にロングスローの際のミスが目立った。スローワー江良颯の技術の向上とともにFW全体の再度の意思統一の徹底が必要だろう。

 光明は、スクラムでプレッシャーをかけ続けたことと、ピンチの連続だった前半の20分間以外は常にボールを素早く動かし続け、相手を疲弊させたフィットネスの高さだろうか。カナダのルーカス・ラムボール主将をして「ラスト20分は力尽きた」と言わしめ、後半だけで6トライを奪ったフィットネスの高さは、上位国との対戦でも大きな武器となるだろう。次戦のアメリカ戦では、よりタフなメンタルで試合に臨み、より長い時間攻撃し続ける展開を望みたい。

[文:江良与一]

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