この村の首長の家には、テレビ画面より小さいソーラーパネルがあった。上海にある企業から贈られたものだという。その1枚のパネルのほかに、村と電力網をつなぐ手段は一切なかった。「地方の人々は切実に電力を求めていますが、国営送電網の利用が極めて困難だったり、非常に高額だったりすることは珍しくありません。そこでひとつの解決策となったのが、太陽光発電なのです」とフーは言う。

Development Reimaginesの活動の一環としてフーが管理している「China Africa Climate Action Tracker(中国アフリカ気候変動対策トラッカー)」は、アフリカの再生可能エネルギー開発プロジェクトに対する中国の投資情報をまとめたデータベースだ。しかし、現地の状況が目まぐるしく変化しているせいで、データを把握しきれないことがあると彼女は言う。フーの同僚がザンビアとボツワナを訪問した際、すでに多数の中国企業がさまざまな地域で事業を展開し、利益を上げていたが、そうした状況はほかの地域の人々にはほとんど知られていなかったという。

“中国依存”というジレンマ

中国製の格安ソーラーパネルに対する世界の反応は両極端に分かれている。米国のように関税をかけて中国製パネルの大量流入を防ぎ、国内生産の促進を図る国もあれば、パキスタンのように無条件に歓迎する国もある。

いまのところ、アフリカ諸国の大半が歓迎の姿勢をとっている。日常的なエネルギー不足にあえぐ国々の政府にとって、これは単純な計算問題だ。「安い電力=いい電力」というわけだ。

ただし、グリーンエネルギーへの移行によって自国の製造業が潤うことを期待し、ソーラーパネルの国内での組み立てや小規模製造を奨励する政策の導入を検討する国もいくつか存在する(例えばナイジェリアは、その後すぐに撤回したものの、ソーラーパネルの輸入を禁じる計画を提案している)。

アフリカにソーラーパネルの地元製造企業がほとんど存在しないことが問題なのだと、シンクタンク「ODI Global」のリサーチフェローで、アフリカにおける中国の気候関連投資活動の研究に取り組むエレナ・キリャコヴァは指摘する。アフリカで行われているのは、個々の太陽電池をパネルに取り付ける工程のみだ。これは太陽光発電サプライチェーンの最終工程であり、最も付加価値の低い作業だ。

「ケニアで聞いた話を総合すると、いかに有意義な活動であっても、地元産業の発展を狙うあまりに動きが鈍くなるより、現時点では安価な輸入製品に頼る方が得策だとの見方が強いようです」とキリャコヴァは言う。「この問題について今後も議論が続くことは間違いありません。しかし現実には、中国製ソーラーパネルの輸入に頼るいまの状況がしばらく続くでしょう」

(Originally published on wired.com, translated by Mitsuko Saeki, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』による太陽光発電の関連記事はこちら。中国の関連記事はこちら。

Related Articles

・太陽光発電は環境左派から親トランプにリブランド中
・「みんな死んでいきます」──米の援助削減で南スーダンの子どもに栄養失調の危機
・テスラを脅かす中国EV。その覇権戦略と世界市場の行方

「中国製ソーラーパネル」の輸入がアフリカで急増している理由

雑誌『WIRED』日本版 VOL.56
「Quantumpedia:その先の量子コンピューター」

従来の古典コンピューターが、「人間が設計した論理と回路」によって【計算を定義する】ものだとすれば、量子コンピューターは、「自然そのものがもつ情報処理のリズム」──複数の可能性がゆらぐように共存し、それらが干渉し、もつれ合いながら、最適な解へと収束していく流れ──に乗ることで、【計算を引き出す】アプローチと捉えることができる。言い換えるなら、自然の深層に刻まれた無数の可能態と、われら人類との“結び目”になりうる存在。それが、量子コンピューターだ。そんな量子コンピューターは、これからの社会に、文化に、産業に、いかなる変革をもたらすのだろうか? 来たるべき「2030年代(クオンタム・エイジ)」に向けた必読の「量子技術百科(クオンタムペディア)」!詳細はこちら。

WACOCA: People, Life, Style.