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名前

杉山正和

出身校

山形大学 地域教育文化学部 地域教育文化学科

システム情報学コース機械研究室

瀬尾研究室

現在の所属先

Safran Aircraft Engines

フランスの航空機エンジンメーカーで、航空機エンジンの空力音響設計に携わっています。

留学先

修士:フランス国立応用科学院(INSA)トゥールーズ校

フランス政府奨学金留学生として渡航しました。INP ENSEEIHT(国立トゥールーズ理工科大学所属のグランゼコール)とのマスタープログラムでした。

博士:パリ・フランス国立高等工芸学校(ENSAM)

パリにある理工系グランゼコールです。民間企業で研究活動をしながら博士号取得をめざす「研究による職業教育の産業協定(Cifre)」という制度を利用し、企業から給与を得ています。企業側は博士課程の学生を研究者として採用、学生は企業と大学の両方から指導を受け、博士論文を執筆します。どちらの学校でも日本人学生を見かけたことがありません。

留学先の都市と雰囲気

修士:トゥールーズ

大学都市であり航空宇宙産業の中心地でもあります。南の暖かい気候と開放的なトゥールーズの人々の気質も相まって、学生としてもとても過ごしやすい町です。

博士:パリ

一人ひとりの中に、それぞれのパリがあります。誰もが自分なりのパリを見つけられると思います。

研究テーマ

航空機エンジンの空力音響(空力に関連する騒音)の数値シミュレーションと予測

住居費(月額)

トゥールーズ:430ユーロ

2017年当時、3人でシェアハウスをしていました。学生への家賃補助で200ユーロ程度が補助されていたと記憶しています。

パリ:900ユーロ

生活費(月額)

トゥールーズでは、奨学金の範囲内でやりくりしていたので、ぜいたくな暮らしはできませんでしたが、週末のマルシェでの買い物や国際色豊かな料理を楽しんだりと、日常生活を通して多様な食文化も学びました。TGTG(Too Good To Go) [1] などのサービスを利用すると、食費を抑えつつ食品ロスも減らすことができます。

留学期間

トゥールーズ(修士):2年(フランス政府奨学金受給期間:2年)

M2最後の半年には必須のスタージュ(インターン)があり、給与が出ました。

パリ(博士):3年

留学に至るまでの略歴と現在

 山形大学を卒業後、フランス政府奨学金留学生としてINSAトゥールーズ校に入学、2019年に修士号を取得しました。修士課程修了後、日本に帰国し、株式会社SUBARU航空宇宙カンパニーで航空機の設計・開発に従事しました。一度は日本でのキャリアを選びましたが、世界の航空業界をリードする技術環境の中でもっと自分を磨きたいという思いが強まり、2022年8月からSafran Aircraft Engines、ONERA、ENSAM Parisの3機関による共同博士課程(前出の「Cifre」制度を利用)に進学し、2025年8月に博士論文を提出しました。2025年10月より、Safran Aircraft Enginesに正式な社員として就職予定です。

留学先探し

 学部時代にカナダのモントリオール大学に留学したことを機に、外国語をツールとして仕事をしたいという思いを抱きました。留学先を検討する中で、フランスは留学生への支援が充実していること、そして何よりエンジニアリング分野で世界的な技術力を有していることに魅力を感じ、留学先として強く引かれました。進学先はフランス人の知人からの助言をもとにいくつか候補を絞り、Campus Franceを通じて出願しました。

フランス政府奨学金への応募から試験、合格まで

 フランス政府奨学金のことは学部時代から知っていました。自分が挑戦することは恐れ多いと感じていましたが、だからこそ準備を怠りませんでした。緻密な研究計画書をフランス語で提出し、書類審査後の口頭試問もフランス語で臨みました(理系は英語でのプレゼンも可ですが、あえてフランス語を選びました [2])。

 給費内容は社会保険によるカバーや学費の免除 [3]、それに滞在費の支給もあり、充実しています。私は運よく2年目の延長給費 [4]も受けることができ、学業と生活の両面で大きな支えとなりました。

 さらに、France Alumniやフランス大使館を通じた交流の機会を持つことができ、留学後もフランスとのつながりを感じることができます。日仏のネットワークを維持できるという点においても、フランス政府奨学金制度には大きな意義があると感じます。

語学

 トゥールーズ(修士課程)への留学前にDELF B2を取得し、帰国後、日本での社会人1年目にDALF C1を取得しました。それでも2度目の留学(博士課程)1年目は悪戦苦闘の毎日で、教授の話す内容が理解できないという状況でした。そんな私を助けてくれたのはクラスメートでした。授業後には毎回のようにみんなでアペロ*を楽しみました。大学内に日本人は私1人で、ほぼフランス語100%の日々でした。おかげでフランス語が上達しました。インプットだけでなくアウトプットの機会も多く持つことで自然と語学が身に付くと思います。

※アペロとはアペリティフの略で、夕食前に友人や同僚と食前酒を囲んで過ごすひととき。

留学準備

 2度目の留学(博士課程)準備の際、同じ分野の別の研究所に応募をしたのですが、残念ながらすでに採用者が決まっていました。ところが当時の担当者(今では同僚)が、私の応募書類を周囲に紹介してくれたおかげで、現在の会社から声がかかったのです。こうして博士課程留学が決まりました。本当に人生は何が起こるかわからないと実感する出来事でした。

フランスでの生活

 何事にも正確さが求められる日本の厳しさの中で育つと、フランスの「ゆるさ」に驚きを通り越して戸惑いやもどかしさを感じることがあるもしれません。そうした環境では、ときにタフさが求められます。それでも研究や仕事に行き詰まったときには、そんなフランスの「ゆるさ」(それはときに「優しさ」と言えるかもしれません)に自分から寄りかかってみるのも一つの方法です。例えば、夕方から友人と河岸で腰を下ろしてみたり、思い切って仕事を離れて遠くへバカンスに出かけるのもいいと思います。そんな「余白」に身を委ねてみることで、フランス生活がより楽しいものになるかもしれません。

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今後のキャリア

 博士号取得後は、現在在籍している会社の空力音響開発チームに加わり、次世代航空機エンジンの研究開発に携わります。航空機は日本とフランスはもちろん、世界をつなぐために欠かせない乗り物です。自分が開発に関わったエンジンを載せた航空機が空を飛ぶ姿を目にするとき、一体どんな気持ちになるだろうと考えると心が躍ります。

フランス留学をめざしている人、フランス政府奨学金への応募を考えている人たちへのメッセージ

 「情熱こそが夢を叶え、感動が人生をドラマにする」。これは私が高校生の時、当時の校長先生が残してくれた言葉です。21歳で初めて海を渡ってからこれまでを振り返ってみると、素晴らしい出会い、学び、そして感動にあふれる10年でした。それを後押ししてくれたのもフランス政府奨学金でした。家族や大切な人、自分のキャリアなどをなげうってまでフランスに行くという人生の大きな選択におじけづいたり、しり込みしたりする気持ちもあるかもしれません。それでも勇気をもって踏み出したその先に素晴らしい出会いと、人生を彩るたくさんの感動が待っていると思います。応援しています、Bon courage !

フランスは大学院・研究留学を応援します

フランス政府奨学金は、修士・博士課程の学生およびポスドク研究員のフランス留学を支援しています。

応募期間は毎年9月20日~11月20日です。

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