北朝鮮産シジミの産地偽装事件で、押収物を運び出す埼玉県警の捜査員(写真:共同通信社)
(安木 新一郎:函館大学教授)
北朝鮮からシジミを不正に輸入したとして、外国為替法違反(無承認輸入)と関税法違反(虚偽申告)に問われた埼玉県の水産物輸入会社・元代表取締役の中国人の男に対し、山口地方裁判所は2025年4月、「北朝鮮に対する経済制裁という国の施策に背く反社会的な行為」として懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決を言い渡した。
男は2020年1月に北朝鮮産シジミ18トン、申告価格340万円余りを不正に輸入していた。また、シジミの原産地をロシア産だと偽ったうえに、青森県産として二重に偽装し販売していた。1キロ200円しない北朝鮮産シジミは、スーパーマーケットなどで国産として100グラム約200円で売られていた。「濡れ手で粟」とはこのことだろう。
裁判の過程で明らかになったのは、シジミの不正輸入はこの中国人の一家が続けてきた「家業」だったという点であり、常習性が認められた。中朝国境にいた母親がシジミの受け渡しと産地偽装を担当し、息子が東京にいて輸入と日本での販売を長年にわたって担当していたという。
それにしても、なぜ北朝鮮産シジミは中国産ではなく、ロシア産に偽装されたのだろうか。

WACOCA: People, Life, Style.