ウクライナ軍の地上ロボットに搭載された RPG-7ロケットランチャーが、ロシア軍の陣地を攻撃する様子。ウクライナ軍の地上ロボットに搭載された RPG-7ロケットランチャーが、ロシア軍の陣地を攻撃する様子。Stringer/REUTERSロシアとの戦いで戦闘員が不足しているウクライナは、兵士を支援するための地上ロボットを活用している。負傷兵の搬送からロシアへの攻撃まで、幅広く用いられているが、欠点もある。ウクライナ軍のロボットシステムを統括するオペレーターによると、最も有望な使い方は「ロシアに直接突入できる爆弾としての利用」だという。

地雷の敷設、物資の輸送、遺体の搬送——ウクライナ兵はロシアとの戦いで、これらの任務を地上ロボット(無人走行車両)に任せている。

地上ロボットには少なくとも8種類の活用法があると、ウクライナ軍の「ダ・ヴィンチ・ウルフ大隊」でロボットシステムを統括するオレクサンドル・ヤブチャンカ(Oleksandr Yabchanka)がBusiness Insiderに語っている。

ウクライナ戦争における対ドローンDIY装甲、ますます「マッドマックス」的になる | Business Insider Japan

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前述の任務に加えて、負傷兵の搬送、地雷除去、ロシア軍陣地への攻撃、標的付近での自爆、情報収集にも使われているという。

その中で最も有望なのは、爆弾としての利用だとヤブチャンカは言う。というのも、地上ロボットはドローン(無人航空機)よりもはるかに多くの爆薬を搭載でき、人間が近づくと危険な場所まで接近できるからだ。

「空を飛ぶ無人航空機と地上を走る無人走行車両の決定的な違いは、搭載可能量にある」とヤブチャンカは指摘する。これは、ウクライナが「破壊力の面で常に敵よりも一歩、あるいは半歩でも先を行く」ために欠かせない要素だという。

彼によれば、最大のドローンでも約10キロの地雷を搭載できる程度だが、地上ロボットであれば最小のものでも22キロ以上を運ぶことができ、平均的にはさらに多く搭載可能だという。

また、地上ロボットは兵士よりもずっと近くまでロシア軍陣地に接近して自爆できる。ヤブチャンカの部隊が撮影した戦場の映像記録には、ロシア軍の塹壕や陣地に突入して爆発する地上ロボットの姿も映っている。

Business Insiderは3月にヤブチャンカを取材した。その数時間前、彼の部隊は約30キロの爆薬を搭載した地上ロボットをロシア軍施設の地下室に送り込んでいた。爆発は標的の「隣の通りでも、近くの場所でもなく」、狙い通り地下室内で起き、ロシア軍歩兵を殺害したという。ただし、この主張を独自に確認することはできなかった。

システムの欠点

ロボット技術は進化と改善を続けている一方で、依然として欠点があるとヤブチャンカは指摘する。ロボットは搭載したカメラで情報収集する能力があるが、ドローンの能力には及ばない。草木などのちょっとした障害物でも、その機能は制限されてしまう。

また、通信を失うと「単なる高価な鉄くずのかたまりになってしまう」ともヤブチャンカは言う。それに対処するために、多くの企業がAI(人工知能)などの技術を活用し、オペレーターによる遠隔操作に頼らずに地上ロボットを自律的に動かせるようにする研究開発を進めている。ただし、この分野は今まさに開発競争のさなかにある。

実際に運用されているのは遠隔操作型のロボットだ。たとえば負傷兵の搬送に使えば、他の兵士が救助に向かうリスクを減らすことができる。しかしヤブチャンカは、これは「最後の手段」でしかないと語る。なぜなら、もし途中で通信が途絶えれば、無防備な負傷兵が仲間から切り離されたまま取り残され、ロシアのドローンに発見されてしまう危険があるからだ。

ウクライナのキーウで走行試験を行う負傷者搬送用の地上ロボット「THeMIS」。ウクライナのキーウで走行試験を行う負傷者搬送用の地上ロボット「THeMIS」。Mykhaylo Palinchak/SOPA Images/LightRocket via Getty Images地雷の敷設や物資の運搬も

地上ロボットにはライフルなどの武器が搭載され、ウクライナ兵の代わりにロシア軍陣地を攻撃できる。ヤブチャンカは、この機能について「実装するのが最も難しい」が、「どんな勇敢な歩兵でもできないことを可能にする」と説明した。

たとえば、敵のドローンが頭上を飛び交っている状況のなか、兵士が地雷を敷設するのは「非常に危険」だが、地上ロボットにはそれができる。しかも兵士よりも多くの地雷を運ぶことができる。

他にも、地上ロボットは食料や水、弾薬など、兵士が必要とする物資も運搬できる。通常10人の兵士が運ぶような物資を、平均的なサイズの地上ロボット1台で運ぶことができる。

ドローンとは異なり、地上ロボットは地雷除去も可能だ。兵士に代わって先にルートの安全を確認できる。地雷に当たれば損害を受けるが、人間が負傷したり死亡したりするよりはましだ。

ヤブチャンカによれば、地上ロボットは戦死者の搬送も行うようになっている。通常、この任務には8人ほどの兵士が必要で、彼らの命も危険にさらされる。とはいえ、この任務での地上ロボットの利用も完璧な解決策ではないという。ロボットが通信できなくなったり、地雷に当たったりすれば、結局は兵士が支援に向かわなければならない。

ミルレム・ロボティクス社の「THeMIS」。2018年にフランスで行われた走行試験の様子。ミルレム・ロボティクス社の「THeMIS」。2018年にフランスで行われた走行試験の様子。Christophe Morin/IP3/Getty Images地上ロボットの急速な進化

地上ロボットの技術はまだ進化の途上にあり、企業と兵士の双方が新たな開発や活用方法を模索している。

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