今年の甲子園で優勝候補の横浜を好ゲームの末に破り、鮮烈な印象を残した県立岐阜商業(以下、県岐商)。全国的に公立校が厳しい向かい風に晒されるなか、なぜベスト4に進出することができたのか。複数の関係者や同校OBの証言から、創部100年の「伝統校」の秘密を探った。(全2回の2回目/前編へ)

 1987年卒業の県岐商OB、桑原正之に在学当時の様子を語ってもらった。

「どうしても県岐商で野球をやりたくて、行きました。商業高校ですが、偏差値も高くて普通の進学校と変わらない。だからきちんと勉強して入りました。学校に入ってからも野球部だからといって特別扱いはなく、勉強できない者はエースだろうと4番だろうと練習には参加できません」

 商業系の高校ゆえ3年間で資格取得が求められ、日商簿記1級・2級に合格する生徒が非常に多い。3級にいたってはほぼ全員が取得する。

「日商簿記検定の合格率について、3級では95%近く、2級では全学科合わせで63%を達成しています。1級については会計科の生徒が主に目指しており、例年10人以上が合格していますが、昨年は9人、今年6月の結果では8人が合格しました。学校としては年間20人程度の1級合格者を目標にしています。進学率も80%を超えており、その大部分が総合型選抜や学校推薦型選抜による四年制大学への進学です。国公立大学への進学者も過去2年間で20人以上、名古屋市立大学や静岡大学などへ進学しています」

 MARCHや関関同立など難関といわれる私大への進学率も高く、いわゆる「進学校」にも何ら引けを取らない。教員たちも「日本一の商業高校」と自負し、文武両道をモットーに体育会系、文化系ともに全国トップクラスの部活動が数多くある。

 野球部員で赤点を取った場合、かつてはグラウンドに机を出して勉強させていたというほど、学生の本分である勉学に対して徹底した姿勢を見せていた。とにかく、勉強も練習も厳しくて激しい県岐商の野球部で3年間まっとうすること自体、険しい道なのだ。

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