(CNN) ロシアがウクライナ東部で進軍を続ける中、前線をはるかに超えた場所で新たな攻勢が展開されている。ロシアはウクライナの都市や民間インフラに対しドローン(無人機)を用いた夜間攻撃を強化しており、ドローンの増産が急速に進むにつれ、攻撃は激しさを増している。

多くのドローンは特に高速でもハイテクでもないが、クレムリン(ロシア大統領府)がウクライナの防空網を圧倒し、民間人の士気をくじくべく、一晩で700機超を発射できるほどに安価だ。専門家はそう指摘する。

ロシアはイランから攻撃ドローン「シャヘド」の設計図を入手し、自国に大規模な工場を建設。毎月数千機を生産している。ロシアの戦術の進化にともない、安価な防衛手段の有効性が低下していることから、ウクライナはより高価な弾薬と革新的な技術で反撃せざるを得なくなっている。

以下の図はロシアによるウクライナに対する1日あたりのドローン発射回数を示したものだ。今年、一晩で記録された最大の攻撃は7月9日の728回で、昨年の193回を上回った。

ドローン攻撃の急増は、戦争が進化し、こうした無人自律機に依存するようになっていることを示している。

ウクライナとロシアは空軍力の欠陥を補うため、ドローン性能の向上に努めてきた。この動きは西側諸国すべてに当てはまるわけではないが、専門家によると、米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は、将来の紛争で優位性を保つため、ドローンと対ドローン作戦の強化に積極的に取り組んでいる。

ウクライナ国防省情報総局はCNNに対し、ロシアはシャヘド型ドローンを毎月6000機以上生産する計画だと述べた。イランからこれらを購入していた戦争初期と比べて、ロシア国内での生産ははるかに安く済むという。

ロシアは2022年時点でこの種のドローン1機あたりに平均20万ドル(約3000万円)を支払っていたが、25年には大量生産により、その金額は約7万ドルにまで下がったという。

ただし、費用の見積もりには大きなばらつきがある。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、シャヘド136は1機あたり推定2万~5万ドルとなっている。一方、地対空ミサイル1基の価格は300万ドルを超える場合がある。

この比較的安価なコストにより、クレムリンは夜間のドローン攻撃を強化し、より頻繁に大規模攻撃を実施できるようになっている。戦争初期には、ミサイルとドローンによる大規模攻撃はおよそ月に1回発生していた。CSISの分析によると、25年半ばには平均8日おきに発生するようになった。

多くの民間人は、絶え間ないドローン攻撃の脅威におびえている。

ロシアは前線から数百キロ離れたウクライナの都市を長距離ドローンで攻撃する一方、ロシア支配地域に近い都市の住民は、FPV(1人称視点)ドローンによる攻撃に毎日悩まされている。ヘルソン州の住民は以前CNNに対し、歩行者、車、バス、さらには救急車がFPVドローンによって攻撃されており、標的に制限がないようだと語った。

CSISによると、ドローンが標的に命中した割合は今年4月以降、20%近くに達し、24年からほぼ倍増している。CSISのアナリストは、「シャヘドが標的に命中したかどうかは問題ではない。重要なのは、テロ兵器が民間人に及ぼす複合的な影響と、防空体制に与える負担だ」と述べた。

ロシアの戦術は「継続的な圧力を維持すること」だとCSISの研究員は指摘する。「彼らの戦略は今、こうした消耗戦を重視するようになっている」

ウクライナもまた、最前線ではFPVドローンで反撃し、ロシア領内のインフラや兵器施設の攻撃には長距離ドローンを用いている。

米シンクタンク、戦争研究所(ISW)のロシア担当アナリスト、カテリーナ・ステパネンコ氏は「あらゆる技術開発に対し、両国は既に対抗策を模索している。イノベーションのサイクルは非常に速いため、わずか2~3週間のうちに技術革新への対抗策が現れている」と指摘した。「そのため現時点では効果的かもしれない一部のアプローチが、数カ月でそれほど効果を発揮しなくなる可能性がある」

ISWによると、ウクライナとロシアは現在、戦場で自律的に判断を下す人工知能(AI)搭載ドローンのほか、空中攻撃対策としてミサイル発射よりも安価に配備可能な迎撃ドローンの開発にも取り組んでいる。

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