2025年8月29日 午後0時00分

医療MaaSの専用車両の設備を確認する参加者=8月28日、福井県小浜市働く婦人の家

 通信機能がある医療機器を備えた車両で看護師が「無医地区」などに出向き、病院にいる医師がオンライン診療を行う「医療MaaS(マース)」について、福井県が嶺南で導入を検討している。通院が困難な高齢患者らの受診機会を確保するとともに、医師の巡回診療の負担軽減を図る。小浜市で8月28日、専用車両の展示会を県内で初めて開き、医療従事者らがオンライン診療に理解を深めた。

 医療MaaSは、看護師が専用車両内で医師の指示を受けながら患者に聴診器を当てたり、医療用ハンディカメラで撮影したりする。医師はリアルタイムで患者の心音を聞いたり、喉や皮膚、内耳の状態をモニターで見たりできる。県地域医療課によると、全国23地域で導入されている。

 同課によると、嶺南には周辺に医療機関がない「無医地区」「準無医地区」が小浜市、若狭町、高浜町に計8地区ある。へき地医療拠点病院の杉田玄白記念公立小浜病院(同市)の医師と看護師が一部地区で巡回診療を行っている。病院から最も遠い地区は38キロ離れており、移動に片道1時間かかる。

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 また、医療機関がない地域に市町などが開設する「へき地診療所」は嶺南に7カ所あり、1人の医師が複数の診療所で従事する例もあるという。

 患者の高齢化や医師不足が課題となっている現状を踏まえ、県は嶺南での医療MaaS導入に向けた検討会を7月に立ち上げた。県の四方啓裕・二州健康福祉センター所長兼若狭健康福祉センター医幹を委員長に、公立小浜病院、市立敦賀病院、県医師会、嶺南3医師会で構成し、嶺南6市町がオブザーバーで加わっている。県地域医療課は「来年度に実証実験を行い、導入に向けた課題を整理したい」としている。

 28日に小浜市働く婦人の家で開いた専用車両の展示会には、嶺南の医療関係者や市町職員ら35人が参加した。京都府宮津市で導入されている専用車両や、医療MaaSで使われる聴診器やカメラといった機材の機能が説明された。

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 公立小浜病院の菅野元喜病院長は「車内の設備は十分で画像もきれいに映り、(オンラインで)必要最低限の診察ができそう。医療人材の有効活用に役立つ可能性がある」と期待した。県外の先進地の関係者による講演などもあり、オンラインを含め約80人が聴講した。

 同様の展示会を30日に敦賀市でも開く。

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