日本の大企業が業績を伸ばす一方で、日本人の暮らしが楽にならないのはなぜか。独立行政法人経済産業研究所リサーチアソシエイトの岩本晃一さんは「その答えは、『メイド・イン・ジャパン』を手放した日本企業の選択に隠されている」という――。


※本稿は、岩本晃一『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(朝日新書)の一部を再編集したものです。


産業用コンテナ貨物船、フォークリフトハンドリングコンテナボックス積載用輸入輸出・輸送産業コンセプト

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輸出を増やすドイツ、輸出が増えない日本

日本とドイツの最も大きな違いは、「輸出」である。ドイツがこれほど高い経済パフォーマンスを発揮する原動力は、「製造業の輸出」が主要因であると断定してよい。


ドイツは、1990年代後半までは合計特殊出生率が日本よりも低く、2000年代に入ってからもしばらくは日本並みかやや高い程度で推移したため、需要の少ない国内市場だけでなく、海外市場に販路開拓を求めざるをえなかった。


よくドイツはユーロ安を活用してEU域内に輸出していると言う人がいるが、『通商白書2016』にあるように、ドイツからEU域外への輸出と日本の輸出を比較しても、ドイツからEU域外への輸出の方が多い。ドイツ人は積極的に外国に出かけて新規市場開拓を行っていると言える。円安になっても輸出数量が増えない日本とは大きく異なっている。


円安は積極的に外国に出かけて新規の販路開拓をする絶好の機会だが、実態はそうでなく、円安による価格変動分が増益となるが、輸出数量は増えていない。日本人は国内に閉じこもっているのである。


市場が国内に閉じていれば、労働生産性が上がった分だけ雇用者数は減少する。だが輸出が安定的に伸びれば、労働生産性が上がっても、雇用者数と賃金は上昇する。それがドイツの実態である。


企業がグローバル化すると、外国人株主が増え、株の配当が多くなり、日本国内の賃金が抑えられることにもつながっている。


労働生産性、雇用者数、賃金の3つが恒常的に上昇している国は先進国の中でドイツだけである。ドイツに見習うべき点があるのは明らかだろう。


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