ウクライナとその支援国が戦争終結と将来の安全保証に向けた取り組みを続ける一方で、ロシアはドローン(無人機)とミサイルでキーウに大規模な攻撃を夜間に仕掛けた。

  この攻撃により子供4人を含む18人が死亡、少なくとも48人が負傷したと、ウクライナ当局は報告。がれきの下にさらに遺体が埋まっている可能性もあると、ゼレンスキー大統領がテレグラムに記した。

  「ロシアは交渉のテーブルではなく、ミサイルを選んでいる」とゼレンスキー氏は28日、X(旧ツイッター)に投稿した。

  ウクライナの防空部隊によると、ロシアはドローンを約600機、極超音速弾道ミサイル「キンジャール」を2発、短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」を9発、「Kha-101」巡航ミサイルを20発それぞれ発射した。このうちウクライナは、563機のドローンと26発のミサイルを迎撃したという。

  ウクライナ空軍のデータを基にブルームバーグが試算したところ、今回の攻撃は今年2番目の規模だった。

  ロシアのプーチン大統領がアラスカで行ったトランプ米大統領との首脳会談で、和平合意の一部としてウクライナの安全の保障に同意したと米当局者が主張して以降、トランプ氏は対ロシア制裁を控えている。だが、和平合意に進展の兆しは全く見られていない。ウクライナはロシアとの合意が成立する場合に恒久的な効力を持たせるべく、米国を含む支援国に安全の保証を求めている。

  プーチン氏は占領していない地域も含む領土の割譲などウクライナに対する最大限の要求を変えておらず、交渉の次の段階としてゼレンスキー氏との会談を求めるトランプ氏の呼び掛けも無視している。

  トランプ氏は26日、自分が戦闘を終わらせることができないなら「経済戦争」になると警告し、「極めて深刻な」結果を考えていると警告。「ロシアにとって悪い結果が生じるだろう。それはしたくない」と語った。

  今回の攻撃の後で、欧州委員会のフォンデアライエン委員長はまずゼレンスキー氏と、次いでトランプ氏と電話で会談したと明らかにした。同委員長はXで「プーチン氏は交渉の場に出てくる必要がある」と主張し、何らかの和平合意が成立する場合にウクライナには「信頼できる、確固とした安全の保障」が欠かせないと論じた。

  ウクライナ政府高官は今週、カタールとサウジアラビアを訪れ、28日にはスイス、29日は米国に向かう予定。米国ではトランプ政権のメンバーと戦後の安全保障体制の構想について意見を交換する。

EU代表部も損傷

  攻撃ではキーウの欧州連合(EU)代表部も損傷したと、欧州委員会のコス委員(拡大担当)がXに投稿。「この残酷な攻撃を強く非難する。ロシアが平和を拒み、テロを選んでいるという明確な証拠だ」と記した。同委員はウクライナのEU加盟プロセスを担当している。代表部の損傷の詳細には触れていない。

  英国の公的な国際文化交流機関、ブリティッシュ・カウンシルの建物もロシアの「愚かしい」攻撃で損傷したと、スターマー首相がXで説明。「プーチン氏は子供や民間人を殺害し、平和への希望を破壊している」と論じた。

  英外務省はこの攻撃について、在英ロシア大使を召還する見通しだと、スカイ・ニュースが情報源を記さずに報じた。

  ドイツのメルツ首相はバルト海の海軍施設の訪問に際して記者団に対し、欧州に対するロシアの軍事的脅威は現実で、「ロシアは欧州の防衛態勢と防衛能力を試している」と指摘。「今後数カ月、数年にわたり、われわれは自由と平和、NATO加盟国の領土の完全性を守るためにできることは何でもしていく」と続けた。

  27日深夜からウクライナ各地ではドローンや弾道・巡航ミサイルの襲来を知らせる空襲警報が鳴り響き、住民らは避難所にとどまるよう促された。

  攻撃が終わり、キーウでは直接的な打撃や倒壊したがれきで損傷した市内各所の住宅地や民間インフラで、救急隊や緊急対応チームが作業を始めたと、市当局がテレグラムで明らかにした。

  キーウの軍事行政責任者、ティムール・トカチェンコ氏は「ロシアは5階建ての建物を1棟全体破壊した」とテレグラムに投稿し、「救急隊ががれきの中から生存者を救出しようとしている」と続けた。

  ウクライナの他地方も攻撃にさらされた。中部のビンニツァ州ではエネルギー施設が攻撃され、約6万世帯で停電したと、ザボロトナ州知事がテレグラムで報告した。

原題:Russian Air Strikes on Kyiv Kill 18 as Putin Snubs US on War (3)、UK to Summon Russia Ambassador After British Council Hit: Sky(抜粋)

(被害状況を更新し、第9段落にフォンデアライエン欧州委員長、第14段落にメルツ独首相のコメントを加えます)

WACOCA: People, Life, Style.