人が減りゆく社会の中で高知の未来のあり方を考える人口減少シリーズです。
今回のテーマは、「保育園留学」。全国的にも徐々に広がりを見せている取り組みですが、一体どういったものなのでしょうか。
高知県土佐清水市のしみず幼稚園です。
現在55人の子どもが通う認定こども園で、園庭を走りまわったり動物と触れ合ったりと、自然の中でのびのびと成長する環境が揃っています。このしみず幼稚園は県内で唯一「保育園留学」に取り組んでいます。
保育園留学とは一体どういったものなのか。東京に本社を置き保育園留学を行っている「キッチハイク」の長谷部由梨さんに話を聞きました。
■長谷部さん
「1~2週間、子どもが地域の保育園に通いながら、地域で家族で暮らし体験ができる留学プログラム。子どもにいろんな経験をさせたいが、なかなか今いる自分たちの環境ではそういったものがかなわず、自然豊かな環境で子育てをしてみたいという希望をもつ家族が利用している」
保育園留学は、キッチハイクの代表がコロナ禍で思うように子育てができなかった経験から2021年に始まった事業で、これまでに全国で約2500組の家族が利用しています。
全国45の自治体の62の保育園や幼稚園で行われていますが、中でもしみず幼稚園は人気が高いそうです。
しみず幼稚園の保育園留学としての魅力を聞きました。
■長谷部さん
「高知県の方はご存じだと思うが、圧倒的な大自然があるところ。 都市部の人からするとスケール の違う海であったり、山に囲まれた暮らしができるというところ。非日常の自然体験ができるというところが、まず一つ人気の理由。その中でもしみず幼稚園の取り組みがすごくユニーク。しみず幼稚園での体験も魅力のひとつだと思う」
しみず幼稚園では市内にある多くの自然を生かし、子どもたちや先生総出で夏は川遊びに出かけるほか、園長自らが園の近くの谷を切り開いて、子どもたちが本当の自然の中で遊ぶ場を設置。
四季折々の自然に触れさせることで、子どもたちの感性を養うなど都会ではできない体験ができると、人気を集めています。しみず幼稚園では24年12月の保育園留学スタート以来、東京や大阪、愛知などから18家庭、26人の園児を受け入れています。
7月初旬から中旬に保育園留学で土佐清水市を訪れた東京都の中村さん家族です。
保育園留学に訪れた家族には、市内にある3つのゲストハウスなどが滞在先として準備され、そこで1週間から2週間暮らしています。
中村さん家族は、インスタグラムで保育園留学に興味を持ち、自分たちが小さいころに園庭を走り回っていた記憶もあって、子どもに都内ではできない体験をしてほしいと参加を決めたといいます。
■中村さん
「(東京では)保育園で庭もないビルの三階建てのところで、プールも屋上にちょっと作ってという小さい保育園。子ども的にも海は最初怖がって いたが、最後はキャッキャッ波で遊んでいたので、それは子どもにとってもいい体験になっていると思う」
しみず幼稚園に来た当初、娘の果穂ちゃんは緊張からか、なかなか両親から離れられないでいましたが、2週間の留学の最後にはみんなの前でニコニコと笑う姿が。
友達とハイタッチし、担任の先生とハグ。外に出ると友達が乗るバスにも手を振っていました。
しみず幼稚園の西村光一郎園長によると、保育園留学参加のきっかけは知人からの誘いだったということですが、新しい風を入れることで園としての成長も期待できると話します。
■西村光一郎園長
「園としては新しい空気やし、社会が認めてくれたという自信がつく。先生たちも勉強になる、刺激を受けて一生懸命勉強するし、僕自身もそう、いろんな県の人たちの意見を聞いて、子どもたちにとってもいい」
保育園にとっても訪れる家族にとってもより良い経験となる保育園留学。
さらにこの取り組みにより、自治体の関係人口の創出が期待されているほか、移住者の増加にも繋がることがあるといいます。
■長谷部さん
「一番初めに保育園留学を始めた北海道の厚沢部町という場所では、事業を始めて3年半経つが、そこは5組以上の移住をされている家族がいる。そこでは子ども同士が友達になり、親も先生や地域の人たちとの交流を通じて、また会いたいと思える人たちに出会えていけるという所が、また訪れたい地域になっていけるきっかけの一つになっている」
いまはまだ数少ない保育園留学。人口減少が進む中、高知が持つ多くの自然や人のぬくもりをこうした活動に活かすことも人口減少対策の一歩なのかもしれません。
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