世界文化遺産への登録を目指している「彦根城」について、文化庁は「価値の説明をさらに充実させる必要がある」として、ことし、国内の候補としてユネスコに推薦するのを見送る方針を決めました。

「彦根城」は、城郭が長い期間、維持され、御殿なども数多く残ることから江戸時代の大名の統治の仕組みを象徴する存在だとして、滋賀県と彦根市が世界文化遺産への登録を目指していました。

26日、文化審議会の世界文化遺産部会で審議が行われ、大名の統治の仕組みを説明するうえで重要となる城郭や大名の定義が不十分だとして、「価値の説明をさらに充実させる必要がある」という判断を示しました。

この結果を踏まえて文化庁は、ことし、国内の候補としてユネスコへの推薦を見送る方針を決めました。

彦根城の推薦をめぐっては、去年、ユネスコの諮問機関による事前評価で、大名による統治の仕組みを十分に表現できているかという課題が指摘されていました。

今後、文化庁は来年以降の推薦に向けて県や彦根市に対し必要な助言を行っていきたいとしています。

【彦根市民の受け止めは】
彦根城の世界文化遺産への推薦がことしは見送りになったことについて、市民からは落胆の声が聞かれました。

このうち、専門学校に通う20代の男性は「正直、悲しくて悔しいです。彦根と言えば彦根城で、子どものころからよく訪れているなじみのある場所なので、来年こそは選ばれてほしいです」と話していました。

また、40代の介護職員の男性は「残念です。ひこにゃんで観光客が増えましたが、また盛り上がる要素があるといいなと思っていたので、来年はいい結果になってほしいです」と話していました。

一方、彦根城の近くに住む60代の女性は、「地元や観光客への規制が厳しくなる可能性もあるかなと思っていて、世界遺産になることを手放しでは喜べないです。周りも賛成と反対が半々ぐらいで、正直、今のままでもいいかなと感じます」と話していました。

【彦根市長 “あと一息頑張りたい”】
彦根城の世界文化遺産への推薦が見送りとなったことについて、彦根市の田島一成 市長が26日夕方、記者会見し、「驚きとともに深い遺憾の念を抱いている。ただ今回、示された課題は解決可能と考えている。今後は、これまで練り上げた説明方法が十分でなかったと真摯(しんし)に受けとめ、『推薦しないと』とうならせるような説明ができるよう、ブラッシュアップしていきたい。国内推薦まで9合目を過ぎたと思っているので、あと一息頑張りたい」と述べ、来年度の推薦を受けられるよう、再度、推薦書を提出する意向を示しました。

【滋賀県 三日月知事のコメント】
彦根城の世界文化遺産への推薦が見送りとなったことについて、滋賀県の三日月知事は、「期待に胸を膨らませる地元の皆様からの応援・協力に対して、よい報告が届けられず、県として大変申し訳なく思っています。早期の登録を実現させるため、国や市とともに、新たな気持ちで全力で取り組んでまいる所存です」とコメントしました。

【滋賀県が会見】
また、県は26日午後、県庁で会見を開きました。

今回の結果について、大名統治システムの説明や国内のほかの城との分析などは進捗(しんちょく)したと評価された一方で、集めた資料をもとにどう論理を組み立てるかなどで議論が不足していたという見方を示しました。

そのうえで、今後については、これまでと同様に彦根城を単独で世界遺産に登録することを目指していく考えを明らかにしました。

県文化財保護課の木戸雅寿 参事員は「彦根城の価値がいまだ国内の議論にとどまり、世界の場へと送り出されなかったことは、誠に遺憾で残念に思っています。もう一歩というところなので滋賀県は決して諦めずに目標に向かってやっていきます」と話していました。

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