トランプ米大統領が中国との貿易戦争を激化させる中で、中国は3月にインドへの接近を静かに始めていた。
中国の習近平国家主席はインドのムルム大統領に書簡を送り、関係改善の可能性を探った。事情に詳しいインド当局者の1人が明らかにした。インドの大統領は儀礼的な地位にとどまっており、政治の実権は首相が握っている。
この書簡では、中国の利益を損なう米国との取り決めに対する懸念が示され、関係改善の調整役を担う地方幹部の氏名も記されていたという。習主席のメッセージはモディ首相にも伝えられた。
非公開情報だとして匿名を条件に述べた当局者によれば、モディ政権が本格的に対中関係の改善に乗り出したのは6月になってからだ。
ちょうどその頃、米国との貿易交渉で緊張が高まり、5月に4日間続いたインド・パキスタン間の軍事衝突後にトランプ氏が自身が停戦を仲介したと主張したことにモディ政権は反発していた。
「竜と象のタンゴ」
インドと中国の関係改善は8月に入り加速しているようだ。トランプ政権が発動した関税に打撃を受けた両国は先週、2020年の国境衝突を乗り越える大きな一歩として、植民地時代から続く国境問題の解決に向け、協議の活性化を図ることで合意した。
そして、モディ首相は今週末、7年ぶりに中国を訪問する。天津で開催される上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせ、習主席との会談も見込まれる。
モディ氏と習氏
Photographer: Shen Hong/Xinhua/Getty Images
インドと中国のこうした関係改善は、米国にとって重大な意味を持つ。歴代の米政権は、影響力を増す中国への対抗軸として、インドとの関係強化を図ってきた。しかしトランプ氏は、ロシア産原油の購入を理由にインドからの輸入に50%の関税を課すという急速な政策転換を行い、モディ政権に衝撃を与えた。
米外交官としてインド駐在経験もあるアシュリー・テリス米カーネギー国際平和財団シニアフェローは、「トランプ大統領こそが真の和平の立役者だ。インドを敵のように扱うことで、インドと中国の接近を促したのだから」と指摘した。
インドの外務省と首相府および中国外務省は、取材の申し入れに応じなかった。
習主席の書簡送付後、中国政府はインドとの関係を称賛する習主席の声明を発表。両国関係を「竜と象のタンゴ」と形容していた。ほどなくして、韓正国家副主席らも両国の関係改善を語る際に同じ表現を使い始めた。
原題:Secret Xi Letter Revived India Ties After Trump Tariff Barrage (抜粋)
(最終段落を追加して更新します)
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