日本貿易振興機構(ジェトロ)とエチオピア航空グループは2025年8月19日、戦略的物流ハブ構想に関する協力覚書(MOU)を締結しました。
本提携は第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の枠組みで実現し、日本企業が直面する海上輸送の課題を航空物流で補完することを目的としています。
エチオピア航空の広大なネットワークを活用することで、日本とアフリカ間の安定的かつ迅速な物流ルートを確立し、両地域の経済協力を一層推進していくものです。
日本企業の輸送課題を解決する航空ネットワーク
近年、日本とアフリカの間の貿易は海上運賃の高騰や輸送時間の長期化、さらには内陸輸送負荷の増大といった問題に直面しています。これにより、安定した輸送手段の確保は日本企業のアフリカ進出における大きな課題となってきました。
今回の協力覚書では、アフリカ最大の航空会社であるエチオピア航空の広範なネットワークが活用されます。エチオピア航空は世界160都市以上(うちアフリカには60都市以上)を結ぶ航路を持ち、日本とアフリカを直結する重要な役割を担っています。
特に成田-アディスアベバ間の週6便の準直行便は、両地域の人や物資を結ぶ大動脈として機能しています。
これにより、従来の海上輸送に代わる機動的な物流ルートが確立され、日本企業の市場参入や供給網構築の大きな後押しとなることが期待されます。
新空港建設と連動した物流ハブの強化
協力覚書の大きな柱の一つが、エチオピアにおける新空港建設計画との連携です。2029年に完工予定のこの新空港は、総投資額50億ドル、年間利用者1.1億人規模を誇る大規模プロジェクトであり、アフリカにおける戦略的物流拠点の中核となることが見込まれています。
今回のMOUでは、保税倉庫やコールドチェーンなどの空港施設機能強化に加え、持続可能な航空燃料(SAF)の導入やインフラ技術の応用による効率的な運用が盛り込まれています。
また、将来的にはドローンを活用した新しい物流サービスの展開も視野に入れており、日本の技術力とエチオピア航空の実績を組み合わせることで革新的な物流モデルを生み出すことが期待されています。
このような取り組みは、単なる物流課題の解決にとどまらず、環境負荷低減や持続可能な輸送インフラの構築にも寄与するものです。
文化交流も視野に入れたサービス向上
今回の協力は物流分野に限定されず、サービスや文化面での新たな取り組みも盛り込まれています。
具体的には、エチオピア航空の制服を現地で生産する支援や、日本食や日本文化要素を取り入れた機内サービスの開発が計画されています。これにより、日本とアフリカの経済的つながりを基盤としつつ、文化的交流を伴う協力関係の深化が期待されます。
また、アフリカ唯一のIATA CEIV医療物資コールドチェーン認証を保有するエチオピア航空の強みを生かし、医薬品や生鮮品といった高付加価値品目の輸送分野での展開も想定されています。
ジェトロは2016年にアディスアベバ事務所を開設し、継続的に日本-エチオピア間の経済関係を強化してきました。今回の覚書締結はその延長線上にあり、物流と文化の両面から日本とアフリカの新たな協力の形を提示するものとなります。
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