中国の過剰生産で世界に鉄があふれている。写真はイメージ(写真:SHUMAILNAYMAT/Shutterstock.com)
中国の鉄鋼輸出が止まらない。今年は年間で1億2000万トンに達する勢いで、過去最高を記録した昨年の1億1500万トンを上回る可能性がある。中国が抱える過剰設備は解消せず、米トランプ政権が打ち出した高関税政策も状況を複雑にした。中国の安値輸出に各国がガードを固める中で、日本鉄鋼連盟などの業界団体は8月、アンチダンピング(反不当廉売、AD)関税をすり抜けて輸出する「第三国迂回」への対策を政府に求めた。
(志田 富雄:経済コラムニスト)
20年で粗鋼生産量10倍になった中国
鉄鋼市場で何が起きているのか——。
問題の本質をつかむには歴史を振り返る必要がある。
鉄鋼の生産量は加工前の「粗鋼」を物差しにすることが多い。1970年代半ばから7億トン前後で推移してきた世界の粗鋼生産量は2000年代に入って急激に増え始めた。世界鉄鋼協会の統計で2000年に約8億5000万トンだった生産量は05年に11億4800万トン、15年には16億2600万トン、21年には19億6300万トンと20億トンに迫った。
背景には中国を中心とする新興国の急成長がある。住宅とインフラ整備が進み、自動車や家電も普及した。鉄鋼は幅広い産業で使う金属だ。非鉄金属の代表格である銅の世界需要は2600万トン程度なので、それと比べても鉄鋼市場は桁違いに規模が大きい。
生産を急増させたのも中国で、2000年に1億3000万トンほどだった粗鋼生産量は20年に10億トンを突破した。世界の鉄鋼需要と生産の過半を中国が占める構図になった。
生産量が需要とバランスしていれば規模が大きくなっても問題は起きない。ところが、中国の経済成長は鈍化し、不動産不況に苦しむ。
中国の過剰な生産能力は2014年後半あたりから世界にのしかかり始めた。余った鋼材が海外市場に流出し、15年の輸出量は1億1000万トンと空前の規模に膨らんだ。安値輸出は東南アジアを中心にした国際市況を直撃。代表的な熱延コイルの東アジア市場での取引価格は14年秋の1トン500ドル程度から15年秋には300ドル以下まで転げ落ちた。
中国の品種別鋼材輸出。鋼板類の増加が目立つ。単位は万トン(注:2025年は1〜6月の数値を暦年換算、出所:中国通関統計)
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中国が抱える過剰設備は国際問題として浮上した。
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