■毛無峠とは? “グンマー帝国国境”の謎めいた魅力

 かつて、この地には国内最大級の硫黄鉱山「小串鉱山(おぐしこうざん)」があり、最盛期には2,000人以上が暮らしたという。1971年に閉山となり、現在はその遺構が残されるのみだ。

 この荒涼とした風景と、群馬県側にある「この先危険につき関係者以外立入禁止」「遭難多発区域」といった看板が醸し出す独特の雰囲気から、SNSなどで“秘境・グンマー帝国国境”として知られるようになり、話題になっていた。

 この看板が経年劣化に伴いリニューアルされたのだが、新しい看板も、あえて文字や県章をかすれさせることで、毛無峠が醸し出す唯一無二の「秘境の雰囲気」を見事に継承している。

 筆者は看板がリニューアルをされたことを知らずに訪れたため、最初は「こんなに看板はきれいだったかな?」と思ったが、すぐに「気のせいか」と思い直したほど、その景色にマッチしていた。

 後日、地元紙で「グンマー帝国の看板がリニューアル!」の記事を読んだときは、思わず過去の写真を引っ張り出してきて見比べたほどだ。それにしても、新聞でも“グンマー帝国”と称され、群馬県も雰囲気に合わせて看板をリニューアルするとは。改めて、インターネットの世界だけでなく地元からも愛されている場所なのだと感じた。

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