石破首相の、「日本の財政状況はギリシャよりもよろしくない」発言が議論を呼んだ(写真:つのだよしお/アフロ)

(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)

 日本の長期金利が上昇しています。10年国債利回りは約17年ぶりに1.6%台まで上昇し、30年債は1999年の発行開始以降で初の3.2%台まで上昇しています。そんな日本の国債市場をざわつかせているのが、「財政悪化」懸念です。

 特に、一連の選挙結果を受けて野党主導の消費税減税への警戒感が広がっているようです。日本の財政については巨額の政府債務の存在が度々取り上げられますが、少なからず誤解されている部分もあるようです。そこで今回は、日本財政のファクトチェックを行いつつ、今後の円金利の動向へのヒントを探ってみたいと思います。

高水準の日本の政府債務

 日本の財政といわれてすぐ思い浮かぶのは、巨額の政府債務の存在でしょう。その総額(国、地方、社会保障基金の合計)は2025年4月で約1466兆円、対GDP比で約235%に達し、主要先進国の中では群を抜いて悪い状況にあるとされています(図表1)。

【図表1:G7の政府債務GDP比】

(注)データは2016年~2025年。2024年と2025年のデータは国際 通貨基金(IMF)の推計値

(出所)IMFのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

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 こうした状況を意識してか、石破首相は今年5月19日の参議院予算委員会で、「日本の財政状況はギリシャよりもよろしくない」と発言して、国内外に波紋を広げることになりました。

 しかし、ギリシャの政府債務の対GDP比は2020年の約210%をピークに低下傾向にあり、2025年には約142%まで低下してきていると推計されています。つまり、こと政府の債務残高に関する限り、日本の状況はギリシャよりも遥かに悪く、引き合いに出すのはむしろギリシャに失礼と言って良さそうです(図表2)。

【図表2:日本とギリシャの政府債務GDP比】

(注)データは2010年~2025年。2024年と2025年のデータは国際 通貨基金(IMF)の推計値

(出所)IMFのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

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 2024年の衆議院選挙、2025年の東京都議選、そして、同年の参議院選挙と連立与党が3連敗し、さらに衆参両院で過半数を失った結果、日本政府は野党の協力なしに予算を編成できない状況に追い込まれています。このため、野党の多くが主張する消費税減税を始めとする積極的な財政政策が実現する可能性が高まることで、市場参加者の一部には巨額の政府債務を抱える日本財政の持続性を材料視する向きが増えつつあるようです。

 しかし、その見方は本当に正しいのでしょうか。まずは、しっかりと「ファクト」を見ていきましょう。

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