台湾で23日実施された原子力発電所の再稼働を問う住民投票の結果は否決となった。頼清徳総統は事故への懸念や政党の政策とバランスを取りながら、高まるエネルギー需要への対応を迫られている。

  住民投票で馬鞍山原発の再稼働に賛成票を投じた有権者は約22%にとどまり、成立に必要だった25%を下回った。投票者の約74%は再稼働に賛成したものの、投票率が低く約65万票が不足する形となった。脱原発の流れが続いていた台湾では、稼働していた最後の原発が5月に運転を停止している。

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台湾の馬鞍山原発

Photographer: I-Hwa Cheng/AFP/Getty Images

  国際危機グループの北東アジア担当シニアアナリスト、ウィリアム・ヤン氏は今回の結果について、原子力によるエネルギー問題の解決について政府に検討するよう求めるシグナルが送られたと指摘している。

  頼総統と与党・民進党は放射性廃棄物の処理問題や事故リスクへの懸念から原発の利用に長年反対している。一方で、エネルギーの約96%を輸入に頼る台湾は、中国による禁輸や封鎖の脅威も抱えている。

  また、データセンターや半導体メーカー向けを中心に台湾の電力需要は2030年までに13%増加すると見込まれ、台湾積体電路製造(TSMC)などの企業は海外より高い電気料金に直面している。

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  さらに、燃料価格の上昇や再生可能エネルギーへの投資は電力会社の負担になっている。公営の台湾電力は、電気料金を抑えるためにコストの増加分を吸収してきたが、昨年末までの累積赤字は4200億台湾ドル(約2兆円)を超えている。このため、政府は企業や家庭向け電力料金の引き上げを迫られている。

  頼総統は同日、「原子力発電の安全性は科学の問題であり、それは1回の国民投票で解決できるものではない」と指摘。「今後、技術の安全性が増し、廃棄物が少なくなるとともに社会での受容が進めば、先進的な原子力発電を排除するつもりはない」と述べ、将来的な利用に含みを持たせた。

原題:Failed Nuclear Power Vote Adds to Taiwan’s Energy Conundrum (1)(抜粋)

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