インド科学技術省(MoST)は7月23日、国立工科大学カリカット校(National Institute of Technology Calicut)のN・サンディヤラニ(N. Sandhyarani)教授が率いるチームにより敗血症の原因となるエンドトキシンを数分で検出できる、電気化学バイオセンサー搭載の低コスト診断デバイスを開発したと発表した。研究成果の一部は学術誌Langmuirに掲載された。
敗血症はグラム陰性菌による感染に起因し、重篤な場合には多臓器不全や死に至ることもある。発症の早期発見には、エンドトキシンの迅速かつ高精度な検出が鍵となる。
研究チームは、計8種のセンサー構造と携帯型デバイスを設計した。7種は電気化学的手法、1種は光学的手法を採用しており、金ナノ粒子、CuO、MoS2、還元酸化グラフェンなどのナノ材料を用いて高感度化を図った。
特に、官能化カーボンナノチューブ(fCNT)と酸化銅(I)ナノ粒子(Cu2O)を組み合わせた電気化学センサーチップは、リポ多糖(LPS)の高選択的検出が可能であり、ポリミキシンBやアプタマーとの結合により選択性を向上させている。標準添加法により、果汁、インスリン製剤、血清中のエンドトキシンを2%以内の誤差で測定できた。
さらに研究チームは、Androidスマートフォンと連携可能な携帯型バイオセンサーのプロトタイプを構築した。血清中のエンドトキシン濃度を10分以内に測定でき、簡便な操作性と現場適用性を両立した。加えて、大腸菌を指標とする水質モニタリングへの応用も検証され、従来法に比べて迅速かつ高精度な定量が可能であることを確認した。
同教授は「さらなる電子設計の改良により、医療現場で活用できる高感度なベッドサイド診断機器としての実用化を目指します」と述べた。


図. センサー・チップおよびデバイスの動作を示す概略図
(i) 携帯型エンドトキシン検出デバイス
(ii) デバイス用Androidスマートフォンのユーザーインターフェースの操作手順
(iii) デバイスによるエンドトキシン検出の校正プロット:(A) 血液サンプルおよび (B) ブドウジュースサンプル。エンドトキシン濃度(g mL-1)の対数と電圧変化の関係をプロット
(出典:PIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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