トランプ米大統領(左)とFRBのパウエル議長(写真:ロイター=共同)

「雇用の下振れリスクが高まっている」

[ロンドン発]米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は8月22日、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し「関税の影響は消費者物価にすでに明確に表れている」と対立するドナルド・トランプ米大統領を牽制した。

 関税によるインフレは一過性の可能性が高いものの、長期化するリスクも否定できないと釘を刺した。「大幅に引き上げられた関税は世界の貿易システムをつくり替えつつある。より厳しい移民政策は労働力人口の成長を急速に鈍化させた」とパウエル議長は指摘した。

「労働市場は均衡しているように見えるが、需給が共に大きく鈍化した結果としての奇妙な均衡。雇用の下振れリスクが高まっていることを示唆している」「政策金利は中立水準に近づいている。政策スタンスを変更する際、慎重に進む余地がある」と9月利下げに含みを持たせた。

 パウエル議長は「見通しとリスクのバランスの変化は政策の調整を正当化しうる」とも語ったため、9月利下げ観測が強まった。パウエル講演を「ハト派寄り」と受け止めた米市場はドル安・株高・債券高で好感した。問題は9月5日に発表される8月雇用統計がどう出るかだ。

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