埼玉県八潮市の大規模な陥没事故で、埼玉県は周辺の住民や事業所を対象に説明会を開き、長期化する復旧工事などで負担をかけたとして金銭的な補償を行うことを明らかにしました。

ことし1月に起きた八潮市の大規模な道路陥没では、転落したトラックを運転していた74歳の男性が死亡し、現場では破損した下水道管の仮復旧工事が続いています。

埼玉県は22日から周辺の住民や事業者を対象に補償についての説明会を始め、知事も出席した1回目の説明会にはおよそ40人が出席しました。

はじめに大野知事が「経験したことのない事故で当初から想定し得なかった様々な課題があり、負担をかけている地域住民や事業者のみなさまには大変申し訳なく思っている。おわび申し上げます」と陳謝しました。

その上で、復旧工事などで長期間にわたって支障や負担を生じさせたとして金銭的な補償を行うことを明らかにしました。

具体的には、現場周辺の半径およそ200メートルの範囲を中心に
▽住民には1世帯につき3万円に加え1人あたり2万円を
▽事業者には一律で10万円を
支払うということです。

また交通規制によって休業を余儀なくされたり売り上げが減ったりした事業者には営業補償も行うことにしています。

このほか現場周辺では下水の臭いで窓を開けられず換気ができないといった声があがっていましたが、事故後、空気清浄機やエアコンなどを通常よりも使用していた場合、電気料金などの増加分を負担するとしています。

県によりますと、対象となるのはおよそ420世帯とおよそ90の事業所だということです。

【本格復旧 5年から7年かかる見通し】
埼玉県は破損した下水道管を年内に仮復旧させるとしていますが、本格復旧には5年から7年かかる見通しです。

現在は仮復旧を終えるために、破損した下水道管の中に堆積している土砂の撤去や地盤改良の工事などが行われているほか、周辺で通行止めが続いています。

県は今後下水道管を仮復旧させたあと、来年3月までに片側1車線の暫定的な形で通行止めを解除することを目指しています。

仮復旧にはおよそ300億円がかかる見通しです。

一方で本格復旧に向けては現場周辺に新たな下水道管1本を追加で埋設して複線化する方針で、現在有識者による委員会のメンバーに意見を聞きながら具体的な検討が進められています。

本格復旧には5年から7年かかるとみられていて、今後も周辺の住民に影響が続くのは避けられない見通しです。

【埼玉 大野知事「事故原因とは切り離した形で 補償 迅速に対応」】
1回目の説明会のあと埼玉県の大野知事は「事故の原因究明にも時間がかかるため、県としては事故原因とは切り離した形で補償について迅速に対応すべきだという判断に至った。解決になるとは思っていないが、まずは一歩進んだと考えている。少しでも住民や事業者の不安を解消できればと思っている」と述べました。

【「精神的ダメージへの配慮 何もない」】
説明会に参加した現場近くで飲食店を経営する80代の女性は「事故以降臭いが気になり、窓も開けらない。店は休業していて、この間に離れてしまうお客さんもいる。精神的なダメージについて配慮が何もないと思う」話していました。

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