公開日時 2025年08月23日 17:12更新日時 2025年08月23日 18:16

農業直撃「収穫全滅」と悲鳴 熊本の大雨被害、2週間

 水に漬かったトマトの苗の片付け作業=11日、熊本県八代市(服田強さん提供)

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共同通信

 熊本県が10~11日に記録的大雨に見舞われ、一部で大雨特別警報が発表されて24日で約2週間。各地で河川が氾濫して広範囲で浸水し、お盆時期の観光業のほか、国内有数の産地であるトマトやイチゴなどの生産にも影響が及んだ。農林水産業関連の被害額は20日時点で約151億円。一部の生産者からは「今期の収穫は全滅だ」と悲鳴が上がる。

 「経験したことのない雨。全部やり直しだ」。トマトの年間収穫量が日本一の熊本県。主要産地の八代市で栽培する服田強さん(49)が肩を落とす。ビニールハウス内で約3万本の苗が水に漬かり、水やりに使用するモーターなども故障した。

 熊本県が国内での生産の大半を占める畳表の材料「イ草」。最大の産地、八代市の農家草野瑞樹さん(48)の作業場では、畳表を製造する織機5台が浸水し、修理代は数十万円に上る見込みだ。経費の高騰や後継者不足に、大雨の被害が追い打ちをかける形で、「イ草農家をやめる人も多いだろう」と顔を曇らせた。

 大雨の影響は書き入れ時と重なり、観光客の受け入れにも打撃となった。県によると、延べ1万人以上が宿泊・観光施設の予約をキャンセルしたほか、熊本市内では少なくとも60台のタクシーが水没するなどした。

 熊本市中心部のアーケード街では多くの店が浸水し、営業に支障を来した。市によると、雨が水路や下水道で排水できずにあふれる「内水氾濫」が発生したとみられる。

 市は、内水氾濫の発生時に想定される浸水の範囲や深さをあらかじめ地図上に示し、アーケード街での浸水も予測していたが「周知が不十分だった」(担当者)。大西一史市長は報道陣の取材に「排水の強化はもちろん、止水板の設置などを進めていく」と強調した。

 熊本県では線状降水帯が相次ぎ発生し、10日夜から11日午前にかけて猛烈な雨を降らせた。気象庁は11日、7市町に大雨特別警報を発表した。床上、床下浸水は計5千棟を超え、土砂崩れに巻き込まれるなどして4人が死亡、少なくとも11人が重軽傷を負ったほか、1人が行方不明となっている。

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