(CNN) 予兆はかなり前から明らかだった。韓国の出生率は過去10年間のほとんどで低下しており、アジア地域での脅威が増し、世界各地で紛争がくすぶるなか、韓国軍にとっての問題となっている。
新たな報告書によれば、過去6年間で韓国軍の兵力は20%減少している。その主な原因は若い兵士の減少で、世界で最も急速に高齢化が進む国の一つである韓国での労働力の減少と高齢者人口の増加を反映している。
国防省の報告書は兵力の減少について、人口減少や「兵士の待遇」をめぐる士官志望者の減少など「複雑な要因」のためだと説明している。報告書では、待遇について詳細には触れられていないものの、これまでの研究や調査では、韓国軍の悪名高い過酷な労働環境が浮き彫りになっている。
韓国軍によれば、7月時点での兵力は45万人で、2019年の56万3000人から減少している。
先ごろ発表された報告書は「常備軍の兵員数が減り続ければ、精鋭部隊の確保が困難になり、装備の運用にも限界が生じる可能性がある」と警告している。
今回の報道は、大規模な駐留米軍を要し、米国と相互防衛条約を結ぶ主要な西側の同盟国である韓国にとってタイミングの悪いものとなった。
国境を接する北朝鮮はウクライナの前線でロシアのために戦う兵士を数万人派遣しており、ロシア政府が国際的な制裁に違反して高度な軍事技術を北朝鮮と共有するのではないかとの懸念が強まっている。
訪朝したロシアのプーチン大統領(右)と金正恩総書記=2024年6月/Gavriil Grigorov/Pool/AFP/Getty Images/File
一方、北朝鮮を支配する金一族は、攻撃されれば核兵器で韓国を破壊すると威嚇し、韓国政府は依然として「敵」であると警告するなど、敵対的な発言を繰り返している。
だが、専門家は、それは必ずしも北朝鮮軍の方が状況が良いことを意味するわけではないとの見方を示す。
北朝鮮も人口問題と出生率の低下に直面しており、技術力は韓国に比べて大きく遅れている。韓国は今、技術革新を通じて新兵不足を補おうとしている。
祥明大学のチェ・ビョンオク教授(国家安全保障)は「通常兵器に関しては、韓国は北朝鮮とは比べものにならないほど先を進んでいる」と指摘する。「現在は兵力が少なくなっているが、私は『小規模でも強力な軍隊』と言いたい。それが我々が目指すべき姿だ」
赤ちゃんが2倍、兵士は3倍
表面上は、北朝鮮にはいくつかの利点がある。
米中央情報局(CIA)の「ザ・ワールド・ファクトブック」によれば、北朝鮮は世界で最も軍事化の進んだ国の一つで、最大130万人の兵士を擁している。これは韓国の兵力のほぼ3倍に相当する。
戦略国際問題研究所(CSIS)のシドニー・セイラー氏は、北朝鮮の兵士は平均10年とはるかに長い間軍務に就いているため「部隊の結束力と互いの能力に関する知識」がより深まると指摘した。
対照的に韓国の徴集兵のほとんどにとって、1年半におよぶ兵役の間に「習得できる高度な技術は実際にはほとんどない」という。
国連のデータによれば、北朝鮮の出生率は25年に1.77となり、韓国の0.75を大きく上回る見通しだ。韓国銀行経済研究所のシニアエコノミスト、イ・ジュヨン氏は、このデータについて、18年以降、北朝鮮の年間出生数が韓国を上回っていることを示唆していると指摘した。
専門家によれば、全体像はより複雑だ。
まず、韓国軍には約310万人の予備役がいる。予備役の訓練は初歩的なものかもしれないが、潜在的な戦争に必要となる兵力は確保できそうだ。そして、ここには韓国に駐留する米軍の兵士2万8500人は含まれていない。
北朝鮮も人口問題に直面しており、新型コロナウイルス感染症の流行後のここ数年で出生率が低下している。北朝鮮の権威主義的な指導者、金正恩(キムジョンウン)総書記は23年に開催された母親に関連した会合で、こうした問題を指摘し、「多くの子どもを産むこと」が愛国的な義務であると訴えた。
韓国銀行経済研究所のイ氏は、農業や鉱業といった労働集約型の産業に経済を依存している極めて孤立した国家にとっては悪い前兆となる可能性があるとの見方を示した。
これが北朝鮮軍にどれほどの影響を与えるのかは今のところ不明だ。しかし、北朝鮮がロシアのために数万人の兵士を派遣しているという事実は、金正恩氏が「祖国防衛の任務を遂行するのに十分な兵士がいないことを懸念していない」ことを示唆しているとCSISのセイラー氏は指摘する。
陸軍の射撃競技で兵士に指示を出す金正恩総書記=7月/STR/AFP/KCNA VIA KNS/AFP via Getty Image
北朝鮮軍は不足している人員を補うため、より多くの女性を入隊させている。韓国銀行経済研究所のイ氏によれば、この傾向は20世紀末の出生率の低下後に始まった。現在では女性の入隊者の割合は推計20%に達しているという。
多くの脱北者にインタビューして来たイ氏によれば、軍の通信や事務、対空砲兵部門に勤務する若い女性が多い。一方、中高年の女性は他の民間部門の人員不足を埋めるために動員されている。
対照的に、韓国では女性は徴兵されない。これは議論の的となっており、義務的な兵役によって学業や仕事、私生活で不利になると主張する若い韓国人男性の間で怒りの声も上がっている。
国防省によれば、23年時点で女性の志願兵が軍全体に占める割合はわずか3.6%にすぎない。
今後の方向性
女性の徴兵を増やすことで韓国の問題を解決できるとする専門家もいる。国防省もその可能性を排除していない。だが、祥明大のチェ氏は、韓国は人員増強という考え方から脱却して、技術の進歩と兵士の精鋭化に注力する必要があると主張する。
「北朝鮮が多くの兵力を持っているからといって、我々も多くの兵力を持つべきだという意見には個人的には賛同しない。我々の兵力は縮小しており、増強する選択肢もあまりない。韓国は科学技術大国になる道を歩んでおり、この危機をチャンスと捉える必要がある」(チェ氏)
ウクライナは欧州の戦場で、兵力も火力も劣る軍隊でも、新しく安価な技術を取り入れることで、はるかに大きな敵に抵抗し、痛烈な被害を与えることができることを実際に証明した。
CSISのセイラー氏は、ドローン(無人機)やサイバー戦争といったツールは、韓国の歩兵や砲兵への依存を減らすのに役立つ可能性があると指摘した。梨花女子大学のリーフエリック・イーズリー教授(国際関係)は、人工知能(AI)支援システムや自律システムが、縮小する軍事力をさらに強化する可能性があると述べた。
祥明大のチェ氏は、韓国は北朝鮮よりもはるかに多くの国防費を支出しているほか、米国などの同盟国とのものも含め多くの軍事演習を実施しており、総合的な戦闘態勢において、北朝鮮よりも優れていると指摘した。
だが、CSISのセイラー氏は「結局のところ、人間は必要だ。訓練を受けた兵士や空軍兵、海兵隊員に置き換わるロボットや自動化技術は存在しない」と警告する。梨花女子大のイーズリー氏もこれに同意し、韓国軍は戦争になれば依然として人員不足に直面するだろうとの見通しを示した。
そして、より広範な課題も残る。韓国当局は、どのようにして韓国国内の軍隊に対する文化的な態度を変えるのだろうか。
より長い任期を務め、より高度な兵器の訓練を受ける専門の幹部になることを志願する人もいる一方、志願者数は年々着実に減少している。
韓国軍内でのいじめやハラスメントに関する注目を集めた事例が、軍に対する否定的なイメージの形成に寄与した可能性がある。
韓国政府は近年、特定の時間帯に携帯電話の使用を許可するなど徴兵に関する制限を緩和しているほか、徴兵制度に代わるより長期の民間奉仕活動の選択肢を提供している。
だが、それだけでは不十分だと祥明大のチェ氏は指摘する。
チェ氏は「軍の福利厚生と戦闘精神を全体的に改善する必要がある」と指摘。人口がさらに減少する今後数十年で現在の規模の軍を維持することがさらに困難になるとの見通しを示した。「40年代には35万人の兵力を維持することさえ困難になるため、最適化された人員構成システムを確立する必要がある。できるだけ早く」
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