赤絨毯でプーチン大統領を歓迎したトランプ大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

米露首脳会談から見えるもの

 8月15日に米アラスカ州で行われた米露首脳会談は大きな進展なく幕を閉じた。「進展なし」は大方の予想通りで、リスクシナリオと見られていた「欧州やウクライナの頭越しに米国が勝手にロシアと手打ちにしてしまう」という展開は回避された。

 トランプ大統領は「多くの点で合意した。まだ完全に合意に至っていない大きな問題がいくつかある」と述べており、合意した「多くの点」が何だったのかは明かされていないものの、これはEUを主軸とする外交成果だと筆者は捉えている。

 過去のコラム『「米国に服従」「暗黒の日」「不平等」など欧州首脳の不満続出、米国とEUの関税合意は欧州の妥協か英断か』でも確認したように、米EU関税交渉はあからさまに米国有利な内容で着地しており、これが安全保障面について米国の関与を約束させた見返りだったという読み筋が濃厚である。今回の首脳会談の帰結はそうした文脈も絡めて理解する必要があるだろう。

 一方、ロシアにとっては上々の仕上がりだったのではないか。プーチン大統領には仰々しい赤絨毯が用意され、送迎車はトランプ大統領と同じ専用車に同乗が許されるなど、ロシアが国際的に孤立しておらず、依然重要な存在であることがしっかり示されたという解釈は多い。

 少なくとも「欧米」と呼べるほど米国と欧州の距離は近いものではなく、また2022年3月のSWIFT(国際銀行間通信協会)遮断時に想定されたほど、ロシアが孤立していないということをよく示す会談だったように思える。

WACOCA: People, Life, Style.