世界各地で記録的な猛暑が続く中、エアコンの普及率が低いヨーロッパ諸国では熱中症による死者が急増している。普及が進まない理由のひとつに環境に配慮した政策があるが、いまその是非が問われている――。


2025年7月1日、フランス、パリのトロカデロ庭園内にある噴水で涼むパリジャンと観光客。フランス気象局によると、フランスの気温は今日がピークとなり、一部の地域では摂氏40度を超えると予想されている。

写真=Jerome Gilles/NurPhoto via AFP/時事通信フォト

2025年7月1日、フランス、パリのトロカデロ庭園内にある噴水で涼むパリジャンと観光客。フランス気象局(メテオ・フランス)によると、フランスの気温は今日がピークとなり、一部の地域では摂氏40度を超えると予想されている。



欧州家庭の8割にエアコンがない

日本各地で30℃を超える真夏日が続いており、エアコンはもはや生命を守るライフラインと言っても過言ではない。特に子供や高齢者のいる家庭では熱中症対策として有効なほか、オフィスや公共施設でも涼しい環境で高い生産性を発揮するため必要不可欠だ。


日本での普及率は9割を超える。内閣府 経済社会総合研究所が今年3月末に実施した調査では、北海道など比較的気温の低い地域も含めた全国の2人以上の世帯のうち、91.7%がエアコンを所有していることが明らかになった。


ところが、同じく熱波に襲われているヨーロッパでは、エアコン事情がかなり異なる。


米CNNは、アメリカの住宅でも約90%がエアコンを備えているのに対し、欧州全体では約20%にとどまっていると報道。国別では特に欧州北部の国々で普及率が低く、イギリスはわずか5%であり、しかもその多くはポータブル型だという。ドイツに至っては3%と低い。フランスでは25%、イタリアとスペインでは40%など、温暖な南部では比較的高い普及率となっているものの、それでも半数に満たない。


死亡率が顕著に上昇する

では、必要がないからエアコンを購入していないかというと、そうでもない。


英ガーディアン紙が報じた速報分析によると、6月23日から7月2日までの10日間で、欧州12都市において2300人が高温により死亡した。うち1500人は気候変動に起因するものだという。


異常気象を研究する学際組織のワールド・ウェザー・アトリビューションによれば、熱波は近年「静かな殺人者」とも呼ばれるようになっている。犠牲者の多くは人目につかない自宅や病院で亡くなるため、深刻さが見過ごされがちだという。死者の88%は65歳以上の高齢者が占めた。


英フィナンシャル・タイムズ紙によると、2000年から2019年の19年間で、西ヨーロッパでは年間平均8万3000人が猛暑により死亡している。同紙は、エアコン普及率が約90%に達する北米での死者は年間2万人にとどまると指摘。4倍以上の死者数の差は、エアコンの普及率の低さが犠牲者を生んでいる現実を克明に物語る。


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