現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第55回となる2025年最初の1月のゴールドコーストは、バーレーヘッズ・ボードライダーズ・シングルフィン・フェスティバルとワールドクラブチャレンジという2つのビッグイベントが開催。
取材、文、写真:菅野大典
1月のオーストラリア。
夏真っ盛りの日が続いています。
今年は暑い夏になると言われていましたが、ゴールドコーストは日中の最高気温も30度足らずといった感じ。快適な気候で過ごせていますが、内陸部では熱波により40度近くまで気温が上昇する地域もあり、各地域で異なる夏を迎えています。
スコールになる日も多く突風を伴う嵐も頻繁に起き、大粒の雹が降り被害を被ることもありました。一昔前までは360日晴れとまで言われていたゴールドコーストですが、気候変動によるものなのか年々気象状況も変化しているように感じます。
ゴールドコーストの波の状況は、初旬は昨年末からのスモールコンディションが継続。
それでも少しサイズが上がった日のスナッパーロックスには、波を心待ちにしていたかのように多くのサーファーが集まっていました。
大混雑のスナッパーロックス。ベストコンディションからは程遠いいもののサーフィンのできるコンディションであれば大人気のポイント。
人混みの中でもガンガン波に乗り一際目立っていたジャック・ロビンソン。
昨年末からゴールドコーストにステイしていた和井田リオ。ジャックと共にたくさんのサーフボードをテストしていました。
あまりスナッパーロックスでは見かけることの無いリアム・オブライアンの姿も。サクサク乗りながらクルーズしていました。
DーBAHに行けばステファニー・ギルモアも入水していました。
今シーズンも休暇をとることが発表されたステファニーですが、美しいラインのサーフィンは健在。陸から見ていても目が奪われてしまいます。
今季CT入りを果たしたジョエル・ヴォーンも毎日のように見かけました。斬新なアプローチをするサーフィンがどこまでCTで通用するか楽しみです。
波が上がってもなかなかうねりが続く事なく中旬以降も基本的にはスモールコンディション。
1月11日、12日にはゴールドコーストの夏の風物詩とも呼べるバーレーヘッズ・ボードライダーズ・シングルフィン・フェスティバルが開催されました。
バーレーヘッズを舞台に毎年恒例のイベントであるシングルフィンフェスティバル。
毎年豪華なメンバーが出場することで有名なこの大会も今年で28年目。使用ボードは全て1980年以前に作られた板で、会場の至る場所にクラシックなサーフボードが置いてありました。
前日まではフラットとも呼べるほどの極小コンディションだったものの、奇跡的にサイズが上がり1-2ftのコンディション。
日本から安室丈と出場した仲村拓久未
イベントの招待を受けて日本から出場した仲村拓久未と安室丈。仲村拓久未はラウンド1ではオッキーやウィルコといったレジェンドサーファーと対戦。普段扱わない板の扱いに苦戦しながらも素晴らしい演技をしていました。
タクミと同様に招待を受けて日本から出場した安室丈。綺麗なレールワークを披露しファンイベントを楽しんでいました。
田中透生
PBCの高校に留学していた時はバーレーヘッズボードライダーズに所属しており、以前行われた同大会のジュニアディビジョンで2位になる好成績を収めている田中透生も出場。スタイリッシュなサーフィンはシングルフィンでさらに見映えの良い感じになっていました。
毎年イベントに参加している元世界王者であるマーク・オクールポの姿も。ヒートに向かう途中でも何度も足を止めいろいろな人との会話を楽しんでました。
ヒートを勝ち上がりインタビューを受けるオージー・ライト。これだけたくさんのレジェンドサーファーを身近で見れるイベントはなかなかありません。
悪天候に加えて小波のコンディションと、通年より観客は少ないものの相変わらずの盛り上がり。業界の人があいさつのような感じでお酒を飲みながら楽しんでいました。
長い手足使ってシングルフィンを乗りこなしていたココ・ケアンズ。まだ若いながらもスタイルのある美しいラインどりのサーフィンで見ている人を魅了していました。
ウィメンズディビジョンで優勝したジギー・マッケンジー。昨年のISAワールドジュニアチャンピオンシップでの優勝をはじめ、ここ1年で数々のタイトルを獲得しています。
マスターズディビジョンでの優勝者は2回の世界王者の経験を持つトム・キャロル。バックサイドには難しい早くて掘れてるコンディションながらも、流石のライディングできっちりと2本まとめて見事優勝に輝きました。
相澤日向がファイナリストに
メンズディビジョンではバーレーヘッズのローカルサーファーである相澤日向も見事勝ち上がりファイナリストの6人の1人に。名前が呼ばれると一際大きな歓声があげられていました。
相澤日向のムービー情景界に多くの人が集まった
イベント前日に行われた前夜祭では相澤日向の映像作品の上映会が開催。現在はフリーサーフィンとコーチングをメインに活動しておりますが、ゴールドコーストで存在感がますます大きくなっています。
相澤日向は5位入賞
最近はコンテストシーンでは見かけることは無くなった相澤だが、サーフィンの実力は健在。見事5位入賞を果たしました。
優勝したアリスター・レジナート
大混戦のメンズファイナルで頭ひとつ抜けたライディングを披露していたアリスター・レジナート。もはやシングルフィンとは思えないバシバシの演技で見事に初優勝の栄光を手に入れました。
翌週の17日から19日はワールドクラブチャレンジがスナッパーロックスで開催。
2年前まではアッシャーカップとしてQSシリーズの練習であったり、各ボードライダーズや有望なサーファーをサポートする目的で開催されていましたが、昨年からは”ワールドクラブチャレンジ”と名前を変更して世界中のボードライダーズを招待しての開催となり、さらに今年からは個人戦もなくなりチーム戦だけによる世界1のボードライダーズクラブを決める大会となりました。
目まぐるしく形を変え進化するワールドクラブチャレンジ。5回目を迎える今年はインターナショナルクラブの数もさらに増え、アメリカから7クラブ、ハワイから4クラブ、ポルトガル、インドネシア、日本、ニュージーランド、イギリスの各国から1クラブと、オーストラリアから31のボードライダーズクラブに加えて48クラブが集結。
タヒチボードライダーズから出場のミッシェル・ボーレス。
タヒチボードライダーズから出場のミッシェル・ボーレス。当初はケリー・スレーターやCJ・ホブグッドといった元世界王者の参加も発表されていましたが会場には現れず。
それでも、アメリカからダミアン・ホブグッドやブレット・シンプソン、ハワイからイズキール・ラウといった元CT選手達が現役の選手に混じりながら自分の地域のクラブを代表として参加しました。
オーウェン・ライト
カルバラボードライダーズにはオーウェン・ライトが出場。どのボードライダーズを見ても名前を聞いたことのある有名な選手ばかりが出場しています。
ニュージーランドのベイボードライダーズ代表には黒川日菜子の姿も。3116という番号は地域の番号で、地域ごとに根付いているボードライダーズクラブならではのユニフォーム。
オミワンボードライダーズ
日本からは昨年まで出場していた鵠沼のラベダベボードライダーズの都筑有夢路、矢作紋乃烝に加え、茅ヶ崎Cボーイズの森友二と田中透生の即席混合チーム。オミワンボードライダーズとして参加。
大会のフォーマットは、4人チーム、制限時間35分のリレー方式。各メンバーのベスト1の合計点で競われ、選手の交代はライディング終了時に手を上げれば次の選手がゲッティングアウトを開始できる。
4人全員がライディングを終えても、また繰り返し入水してスコアを塗り替える事も可能だが、制限時間以内に選手全員がビーチに足をつけていないとボーナスポイントの3点が付かない。
スナッパーラウンド(メインラウンド)とフロギーラウンド(リパチャージ)が設けられ、それぞれのラウンドで50%プログレスである2チームが勝ち上がることができる。
波の状況、残り時間、対戦相手チームのスコアなどを考慮しながら、チームの置かれている状況をそれぞれの選手が理解して行動していないと勝ち上がることは難しく、選手だけでなくチームに指示を出すコーチや伝達係も重要となるまさに総力戦のクラブ対抗イベント。
初日と2日目は天候も目まぐるしく変わる厳しいコンディション。サイズも小さくスローな展開ながらもセットのサイズのある波は形も良く高得点がスコアされていました。
田中透生
短時間で素晴らしい波をキャッチしグッドスコアを出していた田中透生。波のコンディションによってチームの誰に時間を使うかなど個々の技術だけでなくチームの作戦が重要になってくる。
都筑有夢路
今年で3年目の出場となる都筑有夢路。チーム戦も慣れたもので主にラストバッターを務め的確な状況判断でチームを勝利に導いていました。
時折来るスコールがありながらもロータイド時にはチームメンバーが岩の前まで出て応援。悪天候ながらも盛り上がりの尽きないままイベントが進行していました。
MNMボードライダーズ
一昨年チーム戦で優勝を果たしているMNMボードライダーズ代表の瀬戸優貴。人種問わず快くチームに迎え入れてくれるオーストラリアのボードライダーズクラブ。チームに貢献しメインラウンドのセミファイナルまで進出した。
2日目のラストヒートを最後の最後で逆転しファイナルデイ進出をメイクしたASCCポルトガル。ヒート終了時には優勝したかのような雰囲気に包まれていました。
ファイナルデイは波のコンディションが良くなる予報だっただけに、全員がファイナルデイ進出を目標に戦っていた日本代表のオミワンボードライダーズ。
メインにチームの作戦を立てていた森友二と代表の近江俊哉。状況に応じて指示を出しチーム一丸となって戦っていました。
先頭に立ちチームを引っ張っていた森友二とギリギリまで前に出ながら見守るチームメイト達。メインラウンドのクォーターファイナルで敗退してしまったものの、リパチャージラウンドのあるファイナルデイまで駒を進めた。
ファイナルデイには波のサイズも一気に上がり大きなカレントを伴うハードコンディション。スローな展開となった初めの2日間とは全く違った展開となりました。
観客もチームメンバーも多くの人がビーチに訪れ、選手も運営も一体となって場が盛り上がっているのが印象的。
矢作紋乃烝
毎ヒート確実な仕事をこなしチームに勝利をもたらしていた矢作紋乃烝。リパチャージラウンドのクォーターファイナルではエクセレントライドの8.17ポイントをスコアするなど、キレキレのサーフィンを披露した。
最終的にはリパチャージラウンドのセミファイナル敗退、11位という結果に終わってしまいましたが、個々での力を出すと共に、即席チームながら日本人らしい団結力でまとまっていたオミワンボードライダーズ。敗退後に悔しいと言いながらも笑顔が溢れていたのが印象的でした。
勝ち残るクラブを見てみると個々のサーファーが強いだけでなく、しっかりとした作戦と指示を出しているのが印象的。チーム戦をやり慣れているオーストラリアのボードライダーズの強さが際立っている感じでした。
ホストボードライダーズクラブであるスナッパーロックスはクラブ総出で出場メンバーをサポート。
チームメイトのシェルドン・シムカスと共に、何本もビハインドロックからチューブを抜け、何度もチームを勝利に導いたジョエル・パーキンソン。
ファイナルでも残り1分ながらチューブを抜け、素晴らしい演技を見せたが逆転には一歩及ばずの2位。それでもイベント期間中何度もドラマティックな逆転劇を演出し、会場を盛り上げ続けたのはさすが世界王者パーコ。引退はしたもののローカルヒーローはいまだに健在でした。
ノースナラビーンボードライダーズ
レジェンドサーファーであるネーサン・ヘッジを中心にファイナルでは全員がしっかりと仕事をこなし、見事優勝を果たしたノースナラビーンボードライダーズ。昨年に続き2連覇を達成し、賞金10,000ドルがクラブに与えられた。
5回目となる今大会も大盛り上がりのイベントとなったワールドクラブチャレンジ。最終日の日が落ちる時間までヒートが行われながらも、最後まで見ていて本当に飽きないイベントになりました。
チーム戦とはまさにこのようなイベントで、観客も選手も運営も一体となって、その場にいる人全ての人がイベントを楽しんでいるように感じました。
また他のクラブの選手が素晴らしい演技した時には拍手を送ったり、試合に向かう隣のテントにいるチームにアーチを作って送り出してくれたりと、スポーツマンシップの感じられる良い雰囲気が会場にはあり、真剣勝負ながらも何かみんなでエンターテイメントを作っているようにも感じました。
ヒート前に隣のテントのMNMボードライダーズがアーチを作って日本チームを送り出し。ただ勝ち負けを競うだけでなく、自然に会場にいる人たちが場を盛り上げる演出をしており、みんなでイベントを作り上げているように感じました。
日本チームには仲村拓久未や安室丈も駆けつけ応援。スナッパーロックスで試合というのは誰もが憧れる場所。自分も出場したいと言いながらも、一緒になってチームを盛り上げていました。異国の地でこういった存在はとても大きい。
来年にはシリーズ化を予定しており、アメリカのトラッセルズでも開催が決定しているこのワールドクラブチャレンジ。毎年規模がどんどん大きくなりこれからも目が離せないイベントとなっています。
今回このイベントが開催される前に、知り合いのオージー達は波の予報を見て、『波良さそうじゃない?3−4ftのスナッパーが見れるかも』と、自分が出る試合でもないのにイベントを楽しみにしていました。
自分が波に乗ることだけが好きなだけでなく、心からサーフィンが好きなのだなと感じます。
大会を運営する人や関わる人達の様子を見ていても、『純粋にサーフィンが好きで良いものを見たい』という人達が試合を作っているようにも感じました。
バーレーヘッズで行われたシングルフィンフェスティバルもそうですが、今回この2大イベントに触れた日本人もたくさんいたと思います。そしてイベントを通じて日本のコンテストとは違う何かを感じたはずだと思います。
ただ出れてラッキーというのではなく、このような素晴らしいイベントが日本でも開催されるように、現場で感じた人達から伝わってくれたらと思いました。
黒川日菜子
現在はニュージランドのアスリートビザを取得して生活しており、ベイボードライダーズ代表としてイベントに参加していた黒川日菜子。
ニュージーランドのサーフィンの様子を聞いてみると、規模は小さいもののやはりベースにはボードライダーズがあり、2026年のワールドクラブチャレンジの出場権をかけた予選がすでに3月に開催されるようです。
日本でもしっかりと世界に基準を向け、このシステムを取り入れた組織作りをし、日本一のボードライダーズクラブ決定戦などがあればサーフィンがもっと盛り上がるのではないかと感じました。
1月はサーフィンオーストラリアジュニアシリーズのランキングに大きく影響のある大会であるタジーズ・スモール・フライの大会がウエスタンオーストラリアで開催されたり、ジュリアン・ウィルソン・シリアス・ファン・プロジェクトのイベントがサンシャインコーストで開催されたりと、オーストラリア各地で多くのイベントが開催された月となりました。
また日本人サーファーを含む海外からの多くのサーファーがオーストラリアに訪れた月にもなり、ハイシーズンに突入となる月になりました。
ハイシーズンがスタートする月となった1月。海外からも続々とサーファーが訪れ、ルーカス・スキナーと共にトレーニングに励むスカイ・ブラウンの姿も目にしました。
2月にはWSL QS1000 ゴールドコーストオープンが開催し、3月には昨年大盛り上がりを見せたオーストラリアンボードライダーズバトル、そしてアジアとオーストラリア/オセアニアのQS最終戦となるQS3000フィリップアイランドプロが開催と目が離せない時期になります。
真夏のゴールドコーストからのニュースでした。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
WACOCA: People, Life, Style.