9月29日まで応援購入サービス「マクアケ」でプロジェクトを実施中。早割の“バディ Tシャツ デフネオクリ”(5%オフで8360円)は完売。定価(8800円)で販売している。“バディ 2ウエイ バッグ(サコッシュ)”は定価で9900円。“バディ 2フェース トート デフネオクリ”は早割(5%オフ)で4750円、定価で5000円。発送は2025年12月末までを予定

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第10回は、宮城県を訪れた。

今回の技術は…
廃漁網のアップサイクル

アップサイクルベンチャーのアムは2023年、宮城県気仙沼市で設立されました。「大学時代から気仙沼とは不思議な縁があった」という加藤広大代表が社を率います。

アムがアップサイクルするのは、産廃処理の難しさから“厄介者”とされてきた廃漁網。「とあるマグロ漁師との出会いがアムを設立したきっかけ」と話す加藤代表は、交流の中で、廃漁具が海洋環境を破壊していることを知りました。統計も発表されており、環境省は「海洋ごみをめぐる最近の動向」(18年公開)で、漁業関連ごみが海洋プラスチックごみの約6割を占めていることに言及しています。同社が企業理念に「いらないものはない世界をつくる。」と掲げた理由です。

素材ブランド“アムカ”は、そんな企業理念を体現したもの。全国の漁港などから廃漁網を買い取り、バージンマテリアルと変わらない品質のナイロンや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなど、さまざまな素材に再生しています。

アムは2023年に設立した。宮城県気仙沼市を拠点に、廃漁網を回収・再生し、アパレル商品や建材などへと活用している。「いらないものはない世界をつくる。」をビジョンに掲げ、海洋プラスチック問題の解決と地域経済の活性化を目指す

アムは2023年に設立した。宮城県気仙沼市を拠点に、廃漁網を回収・再生し、アパレル商品や建材などへと活用している。「いらないものはない世界をつくる。」をビジョンに掲げ、海洋プラスチック問題の解決と地域経済の活性化を目指す

今回発表した“バディ コレクション”

今回「マクアケ」で発表した“アムカ”の“バディ コレクション”は、気仙沼が水揚げ量日本一を誇るサメやメカジキ漁で使われた、丈夫な漁網を100%使用しています。デザインは、大漁旗と紙テープで出港を見送る伝統文化“出船おくり”や、名産・フカヒレを乾燥させる山風“室根おろし”といった、気仙沼の原風景に着想しました。

アムの共同創業者であり、最高人事責任者を務める立元久史氏は、「実は、“バディ コレクション”は製品化の経験がないメンバーが手掛けたんです」と明かします。素材化の工程は困難を極め、約2年の歳月を費やしました。

工場に送った数トンの漁網に石やプラスチックが混入しており、数千万円の損害が出かねない事態に陥ったこともあります。社員が現地に赴き、工場の協力もあおぎながら手作業で分別を行いました。この経験から、サプライチェーンを担う企業との関係構築こそがアムの核であり、他社にはない強みだと確信しました。

“バディ コレクション”は、応援購入サービス「マクアケ」で600人以上のサポーターを集めています。一方、「あらゆる製品に“アムカ”が使われる未来をつくりたい。さまざまなブランドとのコラボレーションがカギになる」とさらなる成長に貪欲です。

“アムカ”が目指すのは、高機能素材の代表格“ゴアテックス”のような存在です。「どの海でどの漁業に使われたか」という廃漁網が持つストーリー性と、環境破壊という社会課題の解決。この両輪を加速させ、廃漁網が地域を潤し、人々の“相棒”となる未来へと進んでいきます。

漁網を“未来の素材”に変える4つのポイント

1.廃漁網の回収

全国各地の漁業協同組合や水産会社、漁具販売店から、使用済みの漁網を買い取ります。今回のプロジェクトでは、宮城県・気仙沼で約10トンの漁網を回収しました。今後は年間数百トン規模の回収を目指すそうです。

2.分別・洗浄・裁断

リサイクル素材の品質を左右する最も重要な工程です。ロープや浮き、補修糸といった異素材を、数十mにも及ぶ網から一つ一つ手作業で取り除きます。輸送コストを抑えるため、就労支援施設などと連携し、各回収地域で洗浄や裁断までを行っています。

3.ケミカルリサイクル

化学メーカーのUBEと協業し、回収したナイロン製の漁網を分子レベルまで分解。ナイロン原料(ε-カプロラクタム)へと再生します。劣化や不純物がリセットされ、バージンマテリアルと遜色のない品質を実現するほか、自由な染色も可能になります。

4.製織・デザイン

ケミカルリサイクルによって生まれた糸を、石川県の丸井織物が織ります。“バディ コレクション”では、船の出港を見送る“出船おくり”で使われる紙テープをイメージした柄など、気仙沼の文化や風景をモチーフにしたオリジナルテキスタイルを開発しました。

宮城発!
応援購入が高額なプロジェクト3選

“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた宮城県発のプロジェクトを3つ紹介する。

PICK UP 1 : 応援購入総額945万円超

武州正藍染刺子“エアー雪駄”
日本の伝統とハイテク技術を融合した究極の一足が完成

伝統技術と現代技術が詰まった“温故知新”な一足。1872年創業の老舗工場で染めた武州正藍染刺子生地に、押し返すような弾力があるPVC製の“エアーソール”を組み合わせた。履き心地を左右する鼻緒には、肉厚なメッシュ素材を使用。従来のイメージを変える“新雪駄”。

PICK UP 2 : 応援購入総額333万円超

【好評 第2弾】インド渡航20回・開発14年の集大成が
自宅で温め3分で完成

ニシキヤキッチンの「インド料理を極めたい」という思いから生まれたレトルトカレー“本格インドシリーズ”の第2弾。今回は、インドカレー3種とビリヤニ2種を用意した。開発にあたり、インドへは計20回渡航。月日にして14年を費やした、同社のレトルトカレーの集大成。

PICK UP 3 : 応援購入総額214万円超

<サステナビリティ>一度も冷凍していない
宮城県産養殖銀鮭を産地でレトルト加工

阿部亀商店が挑戦するサステナブルなプロジェクト。宮城県産の養殖銀鮭を県内で加工することで、食品の移送距離を表すフードマイレージの減少や脱炭素に貢献する。鮮度への自信を示すように、原材料は銀鮭と塩のみ。ふっくらとした食感をさまざまな料理で楽しめる。

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