TBSの安住紳一郎アナウンサーが、8月3日放送のラジオ番組「安住紳一郎の日曜天国」で連日の猛暑に触れ、「私が都知事だったら、湾岸の高層マンションを解体して風の通り道を作る」と発言した。 

3日の東京の最高気温は36.1℃。安住さんは「あ〜風の通り道を作りましょう。あと公園、それから雨が染み込む土をもうちょっとむき出しにして。私が都知事かお金持ちだったらなあ」とも述べ、暑い東京をなんとかしたいという思いを言葉ににじませた。

この安住さんの発言にSNSでは大きな反響が広がっている。実際に高層建築は猛暑の原因になっているのだろうか。

ヒートアイランド現象の原因の1つ

高層ビル密集で風通しが悪くなることは、都市中心部の気温が周辺に比べて高くなる「ヒートアイランド現象」の原因の1つとして知られる。

環境省は、中高層の建物が増えると、地上近くの風が弱まり、熱の拡散や換気力を低下させる可能性があるとしている。

気象庁のサイトにも、建物の高層化で、放射冷却が弱まるほか、風通しが悪くなって地表面に熱がこもりやすくなると書かれている。

東京都立大学の三上岳彦名誉教授(気候学)によると、東京湾からの海風には気温を下げる効果がある。

東京湾に面した気象庁の気象観測所は、夏の真昼でも他の場所より気温が低くなるという。

しかし湾岸にタワーマンションや高層オフィスビルがあるため、冷却効果のある海風が都心部に入りにくくなっている。

三上さんは「湾岸地域のビル群をなくせば、海に近い場所では昼間の気温は下がるだろう」とハフポスト日本版の取材に話す。

緑も重要

ただし、都市部の気温上昇の要因になっているのは風通しの悪化だけではない。緑地や水面の減少や、アスファルトやコンクリートに覆われた地面の増加もヒートアイランド現象の原因になっている。

環境省によると、アスファルトやコンクリートで舗装された地面や建物の屋根面は夏の日中に表面温度が50~60℃まで達し、大気を加熱したり、夜間の気温低下を妨げたりする。

三上さんは、「湾岸の高層ビルをすべて無くせば、海に近い地域は海風で気温が下がるものの、内陸部になるほどその効果は薄れる」と話す。

三上さんが都心で温度を下げるのに効果的だと強調するのが緑地だ。特に樹林のようなボリュームのある緑地を保全、増加することが、気温上昇の抑制に欠かせないという。

緑は「風の通り道」とも関係がある。

都の「風の道確保等に関するガイドライン」には「緑がクールスポットとして風を冷やし、冷涼な風の流れができる」として、建物の高さ制限に加えて、街路樹や公園、緑地の整備、公開空地等の緑化が効果的だと書かれている。

東京は他の都市より気温上昇が大きい

温暖化により地球全体の気温が上昇している。

ただし、東京などの大都市では都市化の影響で気温上昇がより顕著になっていると考えられている。

気象庁によると東京は過去100年(1929〜2024年)で年平均気温が3.4℃上昇した。

日本全体の1898~2024年での100年あたりの年平均気温上昇の約1.4℃なので、東京は2倍以上上回っていることになる。

安住さんはラジオで「番組が始まって20年ぐらい経ちますけれど、15年ぐらい前の録音テープを聞いたら35℃を超えたって私がギャーギャー言っていました。当時は多分35℃超えたっていうのが大ニュースだったんでしょうね」とも語ったが、その言葉は大袈裟ではなさそうだ。

「安住紳一郎の日曜天国」が始まったのは2005年。気象庁によると、2005年7月の東京の最高気温・月平均値は29.1℃だった。2025年7月は33.2℃で、4℃以上高くなっている。

また8月5日は群馬県伊勢崎市で日本歴代最高の41.8℃が記録され、東京青梅市でも40.3℃が観測された。

東京都心では36.6℃だったが、実際はもっと高かったと考えられる。

三上さんは「東京都心の観測所は2014年に大手町のビル街から、北の丸公園に移動しました。緑地は市街地に比べて、最大2℃程度気温が低くなることがわかっています。気象庁が発表したのは北の丸公園の緑地で測った気温なので、市街地はもっと高い可能性があります」と話す。

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