「小六四(小さな天安門事件)」とまで呼ばれる大規模デモが起きた。背景には習近平政権への不満も(写真:AP/アフロ)

 (福島 香織:ジャーナリスト)

 8月に入って四川省綿陽市江油市で数千人規模の群衆抗議運動が発生した。

 きっかけは、14歳女子中学生のいじめ動画だ。中国のいじめはかなり陰湿で暴力的であることは有名で、こうしたいじめ動画は中国のネットではよく見かける。しかし今回は、「天安門事件みたいだ」「小六四」(小規模な六四=天安門事件)と世間が騒ぐほどの激しい官民衝突を引き起こす大規模群衆抗議に発展した。それはなぜかを考えてみたい。

 経過を説明すると、2日ごろ中国のSNSで女子生徒が集団で1人の女子生徒をいじめている様子の動画が流れた。服を脱げ、と命令され、下着と短パン姿にさせられた後、3人の女子たちが順番にびんたをされたり、飛び蹴りされたりしていた。

 いじめられていた女生徒は四つん這いになって耐えるしかない。その一部始終を誰かがスマホで録画し、それがSNSに流れたようだった。

 この録画で、いじめられていた少女は、家族が警察に通報するよ、と懸命に言い返していた。するといじめている女子たちは「警察なんて怖くない」「それで脅しているつもり?」「まさか、そういえば私たちが恐れるとでも思っているの?(警察に呼び出されても)20分で出てこれたわ」などと言って、ますます暴行を激しくしていた。

 動画はわずか3分ほどだが、のちに明らかになった情報では、いじめは4時間に及んだという。

 のちに、いじめ被害者のいとこがSNSで明らかにしたところによると、事件は7月22日に発生。被害者少女は、ふだんからいじめられている加害者少女らから「話し合おう」と騙されて誘いだされる格好で、四川省江油市(綿陽市管轄)の爛尾楼(建築途中のまま放置された建物)に連れ込まれた。そこで数時間にわたって殴られ、侮辱され、携帯電話を強奪されたという。

 被害者少女が受けたいじめは、これが単発的なものではなく、長期にわたっており、学校で孤立に苦しんでいた、らしい。自殺を図ったこともある、という噂もある。いじめは被害者少女の両親がともに障がい者だったことと関係があるらしい。

 この動画は、瞬く間に国内外に拡散され、いじめっ子たちを批判するネット世論が巻き起こった。被害者少女の父母はこれまでも警察に届け出て、何度も学校側に対応を求めてきたというが、警察も、加害者側を呼び出し、簡単に事実確認をしただけで、ほとんど何の対応もしなかった。それが、加害者少女たちの「警察なんてこわくない」という言動の背景のようだ。

 そういった背景が明らかになるにつれて、ネット世論で批判の声が高まった。そして4日になって警察は「警情通報」という形で、事件の概要を発表した。

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