治安部隊と麻薬カルテルが衝突したメキシコ・クリアカン現場(写真:ロイター/アフロ)

 米トランプ大統領は、以前からメキシコからの麻薬流入を重大な懸念事項と考えている。5月には、メキシコに米軍を派遣し、麻薬カルテルの取り締まりを強化したいと打診したが、メキシコのシェインバウム大統領に断られている。

 メキシコの麻薬犯罪対策に成果が見えない背景には、警察さえも麻薬カルテルに取り込まれている現状があると言われているが、本当だろうか。メキシコの元警察官で、現在、米国でセキュリティ・コンサルタントをしているエド・カルデロン氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──あなたは、メキシコで麻薬カルテルと戦う特殊な警察の任務についていたそうですね。

エド・カルデロン氏(以下、カルデロン):2004年、21歳だった私は仕事を探していました。メキシコの経済状況は悪く、仕事を見つけることは楽ではありませんでした。

 ある日、警察署が新しい実験的な部隊を編成するので、人を募集するという情報が新聞に出ていました。それまでよりも軍事化された警察部隊を構成するという内容でした。

 私は、この軍事化された警察部隊の最初のメンバーの1人になりました。この時は通常の警察学校ではなく、警察官としての職務や戦闘について学ぶため、軍事キャンプの中で8カ月間のトレーニングを受けました。

 私の仕事は、主にメキシコ北部でカルテルと戦いながら街の治安を改善していくというものでした。12年間この仕事をやり、その後は、民間の立場から警察の捜査に参加したり、政治家の護衛などをしたりしました。

──なぜメキシコは軍事化した警察部隊を作る必要があったのですか?

カルデロン:メキシコでは、カルテル撲滅に向けて長らく警察が奮闘してきましたが、成果が出ませんでした。カルテルに取り込まれてしまう警察官もいて、警察が非常に腐敗していたのです。

 また、50口径のマシンガンを所持するなど、カルテルの武装化も進みました。そこで、警察も軍事化してより強力に対抗する必要があったのです。

WACOCA: People, Life, Style.