もし釜本邦茂さんにインタビューできる機会があったら、ぜひ聞いてみたいと思っていた。

 シュートのコツではなくて、体を激しくぶつけられようが、軸足を蹴られてファウルを受けようが、日本代表の9番が意地でも倒れなかったことを。痛がる素振りすら見せなかったことを。単に「強靭」という表現では片づけられなかった。

 4年前にJFA100周年を記念した復刻の「サッカー日本代表アニバーサリーユニフォーム」企画で幸運にもその機会を得られた。当時はコロナ禍にあってリモートでのインタビューだったが、張りのある声で丁寧に答えていただいた。

不世出のストライカーが明かした“予測と準備”

ADVERTISEMENT

 日本代表での歴史を振り返ってもらいつつ、その質問をぶつけてみた。不世出のストライカーは、頷くようにして言った。

「(足を)蹴られるのが分かっていれば、そんなに痛くないんですよ。不意打ちは痛いですがね(笑)。カウンターと一緒で、予測してこっちが先に動く。そうするとうまくできるようになる。コンマ何秒違うだけでダメージが違う」

 予測と準備。

 直接その言葉を使ったわけではなかったものの、彼の話を聞いているとプレーのすべてにおいて肝に銘じていたことは十分に伝わってきた。

メキシコ五輪7点中5点が杉山のアシスト

 日本サッカー史に燦然と輝く1968年メキシコシティオリンピックでの銅メダル。釜本は7ゴールを挙げて大きく貢献し、大会得点王を獲得する。最大のハイライトがメキシコ代表との3位決定戦だった。エスタディオ・アステカは10万人を超える観客で埋まっていた。

 杉山隆一とのホットラインが輝きを放つ。前半18分、左サイドからドリブルで下がりながら中央に向かっていく杉山の動きに合わせて釜本が相手の間にポジションを取る。右足のクロスを胸トラップから左足でゴールに蹴り込んだシーンは、VTRで何度目にしたことか。前半39分の2点目も杉山のパスをゴール正面で受け取って、右足でゴール左に決めている。

【次ページ】 メキシコ五輪7点中5点が杉山のアシスト

WACOCA: People, Life, Style.