米銀シティグループは、制裁対象のロシア人資産家スレイマン・ケリモフ氏が関与していた10億ドル(約1480億円)超に相当する取引を実行した。ブルームバーグニュースが確認した文書で明らかになった。
シティは2017年7月、ケリモフ氏が出所の資金で米デラウエア州に「ヘリテージ・トラスト」を設立。翌年の4月に米財務省はケリモフ氏を制裁対象としたが、その後もシティは信託口座への入金や、複数の米国企業への既存投資など10億ドル以上の取引を処理していた。この投資には、配車サービスのウーバー・テクノロジーズへの5700万ドル、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップへの1億4150万ドルなどがある。
これらの投資をシティが処理していたことは、これまでには報じられていない。ブルームバーグは以前、ケリモフ氏が制裁対象となっていた期間中、信託の管理機関としてヘリテージによるスペースXへの投資の監督も行っていたと報じた。
スレイマン・ケリモフ氏(2021年)
Photographer: Mikhail Svetlov/Getty Images
シティはケリモフ氏の資金の取り扱いを巡って米司法省の調査を受けていると、ブルームバーグは昨年11月に報じた。信託に関連する文書を精査したところ、ケリモフ氏が制裁対象となった後、シティがヘリテージとの取引を合法的に継続するために弁護士や米財務省当局者と協議しながら対応していた実態と、同社が関与した取引の規模が明らかになった。
米財務省は、制裁対象者の資産や取引を凍結するほか、凍結資産に利息が発生した場合に10営業日以内に財務省に報告することを義務づけている。
最終的に財務省はケリモフ氏の隠し資産として認定し、制裁発動から4年後にヘリテージの資産を凍結した。
シティの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、「当社はヘリテージに関して、米財務省外国資産管理局(OFAC)および規制当局に対して完全に透明な対応をしてきた」とコメント。「それとは逆の見方もあるようだが、米国の制裁法および関連規則に従い、義務を果たしてきた」と述べた。
ケリモフ氏はコメントの要請に応じなかった。
原題:Citi Oversaw $1 Billion for Trust US Tied to Sanctioned Oligarch(抜粋)
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