豊橋中央(愛知)萩本監督「何でもダメだと抑えつけるのではなく、まずは認めてあげること」【2025年夏の甲子園 監督突撃インタビュー】

豊橋中央の萩本将光監督(C)日刊ゲンダイ

 「地元に一つ恩返しできたかなと思っています」

 10日の第4試合で日大三(西東京)と対戦する豊橋中央の萩本将光監督(42)はこう言う。愛知県豊橋市出身。中京大中京(愛知)時代の2000年に甲子園出場。13年から豊橋中央のコーチを務め、18年に監督就任。今夏、全国最多173チームが参加した愛知大会をノーシードから勝ち抜いた。メンバーは全員県内出身。主将の砂田、エースの高橋、捕手の松井ら主力は豊橋生まれだ。高橋がプロレスラーの故・アントニオ猪木さんの顔マネをすることが話題になっているが、そんなチームを率いる指揮官に、指導方針について聞いた。

 ──私学4強のうちの愛工大名電と東邦を撃破しての甲子園出場。「明るく、楽しく、元気に」がモットーだと。

「好きで始めた野球ですからね。『まじめぶってやるな』とは言いますね。周りから『個性豊かですね、面白いですね、楽しそうですね』と応援してくれる人が増えているのはすごくありがたいです。そもそも、Sランク、Aランクの中学生は4強や県外の強豪校に行く。そこでどうやって4強に勝てるのか、今回もこれで勝った、とはっきりしたものはわからないです。試合に負けたら練習の仕方を変えたりはしますけど、一つ言えるのは、生徒の個性を大事にしてきたことが、結果として出たのかなと思います」

 ──高橋君はマウンド上でプロレスラーのアントニオ猪木さんの顔マネをすることが話題になりました。

「あれもね、顎を突き出して、って報道されましたけど、顎は出してないんです。彼のお父さんが猪木さんが好きという家庭で育ってるから自然に出るようになっただけで。去年はそんな選手ではなかったです。強豪校から声がかかったとか、いやいや、一つもかかってませんよと。みんなウソばっかりいいますけど(笑)」

 ──このご時世、ガッツポーズも含めて、過度なパフォーマンスを敬遠する傾向があります。高野連も過度なガッツポーズを控えるよう、監督会議で注意喚起した。

「みんな全力でプレーしてますから。いつも練習は厳しくというのは当たり前です。これはあくまで僕個人の考えですが、昔からスポーツは『明るく、楽しく、元気よく』と言う。それがいつの間にか失われてくるんですよね、大人になってくると。そうじゃなくて、いつまでたっても、好きで始めた野球だから、明るく楽しく元気よくやろうっていうことは、常々生徒に言ってます。だから僕も元気で(笑)。40越えたおっさんのほうが元気あってどうすんやと、彼らに言うこともある。ウチはよくガッツポーズをする。それを見て、ダメという人もいるかもしれませんが、相手をリスペクトしてるからこそなんですよ。無表情のままってことは、逆に相手を下に見とることだと思う。それがリスペクトなのかと言えば、ちょっと不思議ですね」

 ──スポーツマンシップの捉え方の問題ですね。

「ウチは練習試合から全力でプレーしてます。常に相手が上だと思ってるからこそ。それが僕はリスペクトだと思っています。そこでガッツポーズが出たり、ウワーッと感情が出るのは相手を侮辱してる行為じゃない。もちろん過度なものはダメだし、相手のベンチに向かってやったらおかしなことですけどね」

 ──コンプライアンスに厳しい世の中ですからね。

「今の時代、何でもかんでもダメだと抑えつけるのではなく、まずは子供たちを認めてあげることが大事だと思います。学校では一般の生徒も含めてそう接してますね」

 ──3年生から1年生まで仲が良いと評判です。

「遠征なんかに行くと、1年生が3年生を外食に誘ったりしてます(笑)。昔じゃ考えられないことですけどね。下級生がめっちゃ楽しいって言ったりして。指導すべきことはしっかり指導しますけど、学校ごとに個性があっていいんじゃないかと思います」

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