ブラザー工業株式会社は、アフリカの地方農村部における印刷・コピー環境の課題解決を目指し、日本発スタートアップの株式会社Dots forと資本業務提携を締結しました。

これにより、現地の生活インフラとしての印刷サービス普及に向けた取り組みを加速させるとともに、2025年8月のTICAD9併催イベントへの共同出展も予定しています。

村の印刷ニーズに応える革新的な取り組み

ブラザー工業は2024年より、アフリカ地方農村部で展開されるDots for社のデジタルプラットフォーム「d.CONNECT」を通じ、同社製インクジェット複合機を活用した印刷・コピーサービスのテストマーケティングを開始しました。

アフリカの農村部では、身近に印刷・コピーできる場所がないため、住民は数十キロ離れた都市まで時間と費用をかけて移動せざるを得ないという現実があります。

ブラザーとDots forはこうした状況に着目し、スマートフォンから簡単に利用できる「村の印刷サービス」を立ち上げ、住民の利便性と生活の質向上に貢献することを目指しています。

今回の資本業務提携は、これまでの協業関係をより強固にし、地方農村における持続可能な印刷インフラの構築を推進する大きな一歩となります。

ブラザーが長年培ってきたプリンター・複合機の開発技術と、Dots forが有する現地ネットワークを融合させることで、より現実的かつ効果的なサービス提供が可能になると期待されています。

TICAD9での共同出展を通じた社会課題の発信

ブラザーとDots forは、2025年8月20日より横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の併催イベント「TICAD Business Expo and Conference(Japan Fair)」に共同出展することを発表しました。

出展ブースでは、アフリカ農村部での取り組みの中核をなすd.CONNECTプラットフォームの紹介や、村の印刷サービスに実際に使用されているインクジェット複合機などの機器が展示される予定です。

この展示は、日本の先端技術がどのようにアフリカの社会課題の解決に貢献しているかを示す好例として、来場者の注目を集めることが期待されます。また、TICADという国際的な枠組みの中で、日本企業とアフリカ発スタートアップの協働による新たなビジネスモデルを発信することで、今後の投資促進や連携機会の拡大にもつながる可能性があります。

ブラザーにとっては、こうした国際舞台での取り組み紹介を通じて、単なるプリンター製造企業から、グローバルな社会課題解決パートナーとしてのブランドポジショニングを強化する機会にもなります。

デジタル格差の解消に向けた両社の想い

ブラザー工業の副社長・桑原悟氏は、「アフリカ農村部での事業はインフラの制約が大きく、従来は難しいと考えていた。しかし、Dots forとの協業により、新たなビジネス機会を見出すことができた」と述べ、印刷・コピーが身近でなかった地域にサービスを提供することの意義を強調しました。

また、持続可能な社会を目指す同社のグローバル経営戦略の一環として、今後もアフリカにおける新たな価値創出に注力していく方針です。

一方、Dots for創業者の大場カルロス氏は、「水や電気に比べて、印刷・コピーの課題は軽視されがちだが、農村住民にとっては大きな負担であり、この課題の解消は彼らの生活の質を劇的に改善する」と語っています。

今回の提携は、「アフリカ農村部の制約をなくす」という同社のミッションを推進する大きな第一歩であり、多くの人々の可能性を広げるきっかけになるとしています。

両社の提携は、デジタル格差の解消と経済的インクルージョンを促進するものであり、日本企業が社会課題解決を軸としたグローバル展開を行う上での好例と言えるでしょう。

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