米国がロシアに求めるウクライナとの停戦合意期限が8日に迫る中、ウィトコフ米特使がモスクワ入りした。交渉期限までの停戦合意取り付けという重要な任務を、トランプ米大統領はウィトコフ氏に託した。

  インタファクス通信によると、ロシアのプーチン大統領は6日、大統領府でウィトコフ氏と約3時間にわたり会談。会談でロシアはウクライナでの戦争についてある種のシグナルを米国側に提示し、ロシアも米国からシグナルを受け取ったと、露大統領府のウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)がテレビインタビューで説明した。両者はウクライナ戦争の解決策や、米露が戦略的パートナーシップを発展させる可能性についても話し合ったという。

  ロシアが期限までに停戦に合意しない場合、トランプ氏は新たな対ロシア制裁を発動すると警告している。プーチン氏はウクライナでの軍事作戦を放棄しない姿勢を示しているが、事情に詳しい複数の関係者によると、空からの攻撃停止を含めた譲歩案を米国に提示する可能性がある。経済制裁の回避が狙いだ。  

Vladimir Putin greets US special envoy Steve Witkoff in Moscow, in this photo supplied by Russian state media on Aug. 6

モスクワで会談したロシアのプーチン大統領と米国のウィトコフ特使(6日、写真はロシア国営メディアが提供)

Photographer: Gavriil Grigorov/Sputnik/AFP/Getty Images

  ウィトコフ氏がモスクワに到着したのは期限の2日前に当たり、トランプ氏の姿勢が明確に変化したことを示している。同氏は当初、ウクライナのゼレンスキー大統領に停戦を迫っていたが、ここ数週間はプーチン氏へのいら立ちを強めている。

  トランプ氏に近い複数の関係者によると、ロシアの無人機(ドローン)による攻撃や破壊されたウクライナの都市の映像が同氏に強い印象を与えたという。

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  トランプ氏はロシア経済の苦境が深まれば侵攻が終結するとみている。CNBCとの5日のインタビューでは、「エネルギー価格が十分に下がれば、プーチンは人を殺すのをやめるだろう」と語った。さらに、「エネルギー価格があとバレル当たり10ドル下がれば、彼には選択肢がなくなる。彼の経済はひどいからだ」とも述べた。

  一方でトランプ氏は、米国内への経済的な影響波及を避けたい考えだ。今年に入り米国のガソリン価格は高止まりし、国内石油会社の供給は需要に追いつけなくなる恐れがある。トランプ氏は今のところ、制裁が米国に影響を及ぼす可能性を否定し、米国内のエネルギー生産を増やすことが可能だと主張している。

  同氏は先週、大統領専用機内で記者団に対し、「米国内にはいくらか石油がある。それを一段と増やせばいいだけだ」と語った。

  ウィトコフ氏がロシアから狙い通りの停戦合意を引き出す可能性は小さいとみられている。その場合、トランプ氏はこれまでに示唆した制裁強化を実行に移すのか、厳しい目にさらされることになる。

  ロシアが今回も制裁強化を免れるようなら、一部の投資家が冷やかす「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも尻込みする)」を裏付けてしまい、ノーベル平和賞にも値すると自身が主張する和平仲介者としてのイメージにも傷が付く。

  制裁の実行に踏み切れば、ロシア産エネルギーの購入国を処罰することになり、世界最大級の経済規模を持つ2国、中国およびインドとの関係がいっそう難しくなる。

President Trump Meets Ukrainian President Zelenskiy At White House

2月にホワイトハウスで会談したウクライナのゼレンスキー大統領(左)、トランプ米大統領(中央)、バンス米副大統領(右)

Photographer:Jim Lo Scalzo/EPA/Bloomberg

  ゼレンスキー氏はトランプ氏と5日に電話会談し、「生産的」な話し合いができたと明らかにした。

  ホワイトハウスは電話会談の実施を認めたが詳細には触れなかった。また、ウクライナメディアの報道によると、ケロッグ米特使(ロシア・ウクライナ担当)が週内にキーウを訪問する見込み。

原題:Putin Meets Trump Envoy as US Seeks to End War in Ukraine (2)、Kremlin Says It Exchanged ‘Signals’ on Ukraine With Trump Envoy(抜粋)

(第2段落にウシャコフ露大統領補佐官の説明を挿入します)

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