「苦しいところでは勝部に託したいと思っていて、彼女もその自覚が出てきました。今までは下級生ということで遠慮したり、シュートを狙わずに終わったりしていましたが、今日はしっかりシュートを打って終わっていた。そこを決め切るメンタルの強さも出てきて、彼女の成長をすごく感じました」

桜花学園高校の白慶花コーチがこのように語ったのは『令和7年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)』、精華女子高校(福岡県)との準決勝後のこと。その試合で21得点11リバウンドを奪取し、勝利に大きく貢献した2年生の勝部璃子について問われたときのことだ。

 

「昨年のウインターカップで精華女子に1点差で負けてしまって、自分もそのコートに立たせてもらっていたので、こういう負けは絶対にしたくないって心に誓っていました。今日はそのときのリベンジをするチャンスをいただいたので、前半は苦しい流れだったけれど、第4クォーターのスタートからチームみんなで『気持ち、気持ち』と声を掛け合うことができて、勝利につなげることができたと思います」

準決勝の感想を語った勝部は、翌日の日本航空北海道高校(北海道)との決勝でも19得点をマーク。特に後半、桜花学園が10点前後のリードをするも得点が止まっていた嫌な時間帯にその悪い流れを断ち切るようにシュートを沈めてチームを盛り立てた。

 

昨年のウインターカップから、覚悟を持って成長

昨年のウインターカップで1年生ながらスターターを担った勝部。冬からこの夏にまでに、気持ちの面が変化したと語る。「2年生ではないようなプレーをしないといけないと思っていて、昨年までは、『まだ1年生だから』といった感じの気持ちがあったのですが、今年になってからは自分がもっと前に出てというか、(そういう気持ちで)プレーしようという覚悟ができたのが変わったところだと思います」

それだけでない。桜花学園に入学してからプレーの幅が一段と広がった。「中学生の頃は自分の身長が周りより高かったので、ドライブからレイアップシュートまでいけることが多かったのですが、高校生では同じ身長の選手や(背の大きい)留学生が相手にいたので、ジャンプシュートや3Pシュートの確率を上げるように意識しました」。

加えて、身体作りの成果も実感したそうだ。「中学生の頃とは考えられないぐらいの量のご飯も食べるようにもなったし、私は筋トレのところが一番だと思っていて、スクワットなどもめっちゃ鍛えたので(笑)。下半身に筋肉が付きやすいタイプなので、これからは上半身をもっと頑張りたいかなと思っています」と目を細めた。

白コーチはエースの成長を評価しながらも、さらなる期待を寄せる。「勝部はうちのエースなので、攻防において核になります。常に点を取ってほしいし、大事な場面で点を取れるようにもなってほしい。それと、彼女に言っているのは数字に残らないところも頑張れるような選手になってほしいということ。ディフェンスをはじめ、ファイトするところでそれがちゃんとできるようになったらより成長するよとは伝えています」。

勝部自身も「今年の桜花学園は身長がない分、昨年よりもっともっとアグレッシブにディフェンスしないといけないと選手同士でも言っています。自分は4番ポジションで出たときに相手の4番が小さい選手だと、まだ(スピードで)スコンって抜かれちゃうので、もっと付いていけるように足も鍛えていきたいです」と承知の上だ。

 

 

勝部は島根県出身。中学時代はHIGHTIMEというクラブチームに属し、ジュニアウインターカップには2年連続で出場。2年次のベスト8が最高成績ではあったが、同大会でも一際目立つ存在であった。

今年のインターハイは開催地が岡山だったため、HIGHTIMEの後輩たちも会場に駆け付けて応援してくれたという。「(HIGHTIMEの)コーチも高校時代に日本一を経験していたので、私も日本一になってみたいというようなことはLINEでもやり取りしていました。本当に日本一を獲れてよかったなと思います」と笑顔を見せる。 

2年生で名門チームのポイントゲッターという重責を負うが、今後も「自分が引っ張っていけたら」と勝部の覚悟は変わらない。

「今までは(高校の試合で)5試合目まで戦うことがなかったのですが、自分が思っていたよりもできたところはあったので、そこは自信になりました」

桜花学園の2年生エースは、自身初となる全国優勝の経験をステップに、さらなる飛躍を目指す。

(文:田島早苗、写真:山田智子)

 

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