現地ルポ インドIT、5つの新常識
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水 達哉=日経クロステック/日経コンピュータ
2025.08.05
出典:日経クロステック、2025年6月11日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
日本企業はインドのIT人材を有効活用し切れていない――。海外にオフショア開発拠点を設ける日本企業は、これまで中国やベトナム、フィリピンを中心とし、インドを活用するケースは限られていた。中国や東南アジアはインドより低コストで文化圏としても近く、日本語話者も確保しやすい。わざわざインドを活用せずとも事足りたわけだ。
しかし本特集の第1回で紹介したように、近年インドでは研究開発の戦略拠点「グローバルケイパビリティーセンター(GCC)」の開設が相次いでいる。中でもメルカリやマネーフォワードなどのデジタル企業は、現地の大手ITサービス企業の力を借りず自前でインド拠点を立ち上げている。「日本企業もインドのIT人材を有効活用している」のが新常識だ。
世界各地の企業がインドに注目し始めている大きな要因の1つは、インドでは高度技術を持つエンジニアを確保しやすいことだ。NRIインドの坂本純一クロスファンクショナルコンサルティング部ディピュティシニアコンサルタントは「インド人エンジニアは東南アジア諸国のエンジニアより技術力が高い。高度技術を欲する企業にとって、インドは選択肢の上位になる」と説明する。
日本企業でもインド拠点新設の動きが加速している。中でも特筆すべきなのが、メルカリやマネーフォワードなどデジタルを本業とする企業の動きだ。2社に共通するのは、現地の大手ITサービス企業に委託せず、自前でインドに拠点を立ち上げて稼働を開始した点だ。ソフトウエアのみならず、拠点自体も「内製」しているのだ。デジタル技術がビジネスの成果に直結する2社は、インド人材の技術力にいち早く活路を見いだした。
メルカリはIIT出身エンジニアの採用で活路
フリマアプリ事業などを手掛けるメルカリは2022年6月、インド南部ベンガルールに技術開発拠点「グローバル・センター・オブ・エクセレンス(GCoE)」を設立した。ソフトウエアエンジニアをはじめとする技術系人材を中心に採用する。GCoEでは、主に日本国内事業のアプリケーション開発を手掛ける。
メルカリのGCoE拠点
(写真:日経クロステック)
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同社の梅澤亮執行役員VP of India Operationは「他の地域でも拠点開設を検討したが、エンジニアの数や能力を鑑みるとインドは見逃せない。採用において重要な地域だ」と説明する。GCoE拠点に在籍する従業員数は、2023年6月末時点で37人、2024年6月末時点では65人と、順調に拡大している。
メルカリの梅澤亮執行役員VP of India Operation
(写真:日経クロステック)
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メルカリはかねて世界各地でIT人材の獲得に力を注いでいる。2018年10月には国内外で50人のエンジニアを新卒採用した。当時として、同社の創業以来最大規模のエンジニア新卒採用だった。このうち過半数の32人を占めたのがインド人エンジニアだ。32人のうち29人は、インド国内最高峰の大学と言われるインド工科大学(IIT)の出身である。
同社は翌2019年もIIT出身のエンジニアを15人採用した。こうして東京オフィスでインド人エンジニアの採用を拡充してきたことが、後のインド拠点開設につながった。
インド拠点の開設は、インド人エンジニアが柔軟に働き続けられるようにする狙いもある。以前はインド人エンジニアが東京へ移住する必要があった。インドに拠点を設ければ移住が不要になるほか、現在東京で勤務するインド人エンジニアが帰国を希望しても退職せず、引き続きメルカリで勤務可能になるわけだ。実際に東京オフィスで勤めていたインド人エンジニアが、インド拠点で継続して勤めている例もあるとする。
マネーフォワードはベトナムに続き拠点開設
FinTech事業を展開するマネーフォワードは、2025年2月にインド南部のチェンナイに開発拠点を開設した。同社は2022年に現地で採用活動を始め、当初は約10人のインド人エンジニアを雇用した。2025年5月時点では、マネーフォワードインディア全体で約60人が勤務する。
マネーフォワードはこれまでも自社プロダクトの競争力強化に向け海外拠点を開設してきた。2019年にはベトナムのホーチミンシティ、2022年に同国ハノイに開発拠点を開設。チェンナイは同社の海外拠点で3カ所目となる。
マネーフォワードインディアのチェンナイ拠点
(写真:マネーフォワード)
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ゴカレ・ヴィヴェック(Gokhale Vivek)マネーフォワードインディア取締役兼チェンナイ拠点長は「当社はグローバルな採用戦略を掲げている。そこでベトナムだけでなく、インドの技術力も活用したかった」と説明する。拠点にチェンナイを選んだ理由として「チェンナイはSaaSに強いIT人材が数多くいる。IITの中でもトップ級といわれるIITマドラス校もあり、優秀な人材が多い」と語る。
マネーフォワードのインド拠点が担うのは、メルカリと同様に日本国内向けプロダクトの開発だ。現在はベトナム人や日本人のエンジニアと共同で、プロダクトの開発を手掛けているという。
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