「シャネル(CHANEL)」の壮麗なハイジュエリーコレクションは、構想から完成まで数年がかりで仕立てられる。今年、その最新作を世界に先駆けて発表するグローバルイベントの場所として選ばれたのは、京都だった。ドラマチックに輝く新作“リーチ フォー ザ スターズ(Reach for the Stars)”。“輝く星をその手に”を意味するそのコレクションに込められた哲学や、キーパーソンへのインタビューから見えてくる、メゾンのハイジュエリーに込められた熱い思いに迫る。また、ガラパーティーには、アンバサダーの小松菜奈や宮沢氷魚をはじめ、アジア各国のセレブリティーも来場し、一夜限りの特別なひとときを華やかに彩った。
翼・星・ライオンに宿る
「シャネル」の美学
京都国立博物館で華やかにベールを脱いだ新作ハイジュエリー“リーチ フォー ザ スターズ”。昨秋の急逝が惜しまれた「シャネル」のファイン ジュエリー クリエイション スタジオ ディレクターのパトリス・ルゲロー(Patrice Leguereau)による最後のコレクションだ。「シャネル」が、各国から顧客やセレブリティー、ジャーナリストを招いた盛大なハイジュエリーのグローバルイベントを日本で開催するのは初のことだ。
左:“ウィングス オブ シャネル”ネックレス(パパラチアサファイア、ダイヤモンド、WG、PT) 16億8432万円 右:“エンブレイス ユア デスティニー”(ダイヤモンド、WG)8億4216万円(参考価格)
上:“ウィングス オブ シャネル”ネックレス(パパラチアサファイア、ダイヤモンド、WG、PT) 16億8432万円 下:“エンブレイス ユア デスティニー”(ダイヤモンド、WG)8億4216万円(参考価格)
“リーチ フォー ザ スターズ”は「翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない」というガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)の言葉に共感したパトリスと彼のチームが全力を注いだコレクションだ。常に運命を自ら切り開き、ハリウッドに渡って映画の衣装も手掛けた彼女の挑戦心をたたえ、コメット、翼、ライオンという3つのアイコンモチーフをシンボリックにあしらったハイジュエリーをそろえた。ちなみに羽根ではなく、翼がハイジュエリーのモチーフとなったのは今回が初めてだ。
“ドリームス カム トゥルー”ネックレス (ダイヤモンド、WG、ブラックコーティングしたWG)5億5121万円
制作には高度な職人技が惜しみなく用いられ、何通りもの着け方を可能にしたトランスフォーマブルなネックレスも登場。コレクションの目玉である“ウィングス オブ シャネル”ネックレスは、19.55カラットのパパラチアサファイアが鮮やかに輝く流麗なデザイン。ピンクとオレンジが絶妙に混じり合ったパパラチアサファイアは、コレクションのテーマでもある“ゴールデンアワー”を象徴するジェムストーンだ。“ゴールデンアワー”とは、ハリウッドでよくいわれる、日没前の最後の光に満ちた美しい瞬間のこと。新作コレクションでは、夢見るようなピンクやモーヴの色調に包まれた昼と夜のはざまの時間を、稀少なジェムストーンを駆使して描き出している。
常に心に翼を持ち、星を目指して空高く飛翔したマドモアゼル シャネルの美学。それを見事に表現した“リーチ フォー ザ スターズ”は「シャネル」のハイジュエリーの実力を余すところなく見せつけたコレクションだ。
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京都の漆芸家がパトリスの依頼によって羽根のモチーフを漆で描いた。“ファイブ ウィングス”ブローチ (ダイヤモンド、ブラックスピネル、漆、WG)3058万円(参考価格)
夜空を見つめるマドモアゼルを表現した “ザ シルエット クロック”置時計(ダイヤモンド、ブラックジェイド、ブルーラッカー、YG、WG) 2億2968万円
“フォロー ユア ハート”ネックレス(ダイヤモンド、レッドスピネル、ルビー、ムーンストーン、PT)1億6841万円
“ワイルド アット ハート”ネックレス(PG、ダイヤモンド、ダイヤモンド)3億5222万円
“ファイブ スターズ”リング(ダイヤモンド、サファイア、ブラックスピネル、ブラックラッカー、WG)1914万円
“ドリームス カム トゥルー”カフ(WG、ブラックコーティングしたWG、ダイヤモンド)3億2153万円
匠の技が織りなす制作の裏側
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高度な職人技によりペンダント部分を取り外して着用も可能
ライオンの背に一粒ずつあしらわれたダイヤモンド
“ウィングス オブ シャネル”ネックレスのデッサン画
古都の情緒溢れるイベントを
京都各所で開催
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左から、小松菜奈、安藤サクラ、宮沢氷魚
小松菜奈
安藤サクラ
宮沢氷魚
キム・ゴウン
小松菜奈
安藤サクラ
宮沢氷魚
最新コレクション“リーチ フォー ザ スターズ”発表の舞台となったのは、京都国立博物館の明治古都館。重要文化財でもあるレンガ造りの建物が、イベントのために特別な内装でしつらえられた。また、海外からの招待客に古都の情趣を味わってもらうため、大徳寺黄梅院でもみやびやかなイベントを実施。ここではパトリスが自身のためにオーダーした京蒔絵の万年筆も展示された。
極めつけは、京都東山の山頂から市内を見下ろす将軍塚青龍殿で開催されたガラパーティーだ。来場したメゾンのアンバサダーたちや各界のセレブリティーが見守る中、コレクションの発表を祝ってドローンが夜空に星を描き出し、美しい演出に酔いしれる一夜になった。
上段:ウェルカムカクテルが催された京都市内の大徳寺黄梅院。千利休が作庭したと伝えられる庭が美しい、通常非公開の寺院 下段:東山の頂に佇む将軍塚青龍殿で開かれたガラパーティー。静けさに包まれた古都の夜空に、光のドローンが舞った
“「シャネル」らしさが何よりの魅力”
プロフィールフレデリック・グランジェ/シャネル 時計・宝飾部門社長
PROFILE:1969年フランス生まれ。ラグジュアリー界の学位授与機関であるスプ ドゥ リュクスを卒業し、LVMHグループで勤務。2010年からルイ・ヴィトン ジャパンCEOを務めた後、2016年から現職。アメリカ、ヨーロッパ、日本で積み重ねた豊富なキャリアをもとに世界各国の顧客の期待に応えている。
来日したシャネル時計・宝飾部門のフレデリック・グランジェ(Frederic Grangie)社長は、在日経験があり、日本文化をよく理解する人物として知られる。そんな同社長に今回のイベントの背後にあるメゾンの意図を聞いた。
「発表の地に京都を選んだのは必然だった。パトリスは京都をこよなく愛し、長年にわたり、たびたび訪れていた。京都の漆芸の名工とも親交を重ね、今回のハイジュエリーコレクションの中には、その職人と協業した漆のブローチもある。また、彼は個人的に、蒔絵で装飾した万年筆をオーダーしていたが、残念ながらその完成を見ることはなかった。そんな彼への深い思いがあり、京都に決定した」。
グランジェ社長は、「パトリスは、『シャネル』をハイジュエリーのトップメゾンへと成長させた立役者だ」と語る。確かに宝石の品質や職人たちのクラフツマンシップは驚くほど高いレベルにある。その上で、並み居るハイジュエリーメゾンにはなく「シャネル」だけが持つ魅力があるとしたら何なのだろうか。
京都の漆芸家がパトリスの依頼によって羽根のモチーフを漆で描いた
「メゾンの強みは、何といってもクリエイション。それが全てマドモアゼル シャネル自身の生涯へとつながっていることが画期的なのだ。私たちの顧客は、ハイジュエリーが好きだから『シャネル』を選ぶのではなく、シャネルという人物像が反映されているから購入する。それらハイジュエリーは、芸術的なまでに高度な職人の技術力に支えられている。これが重要なポイントだ」。
顧客には極めて高価なマスターピースをTシャツに合わせて楽しむ人もいるという。「必ずしもイブニングドレスに合わせなくてもよいというモダンなメゾンの感性は、他に類を見ないものだ」とグランジェ社長。
「制作の最終決定をするときに、シャネルらしくないものはすべて排除する。『シャネルか、シャネルでないか』、シンプルだが、それが一番重要な基本なのだ。“リーチ フォー ザ スターズ”は、これこそがシャネルというクリエイションがそろっている」。
TEXT : KEIKO HOMMA
問い合わせ先
シャネル カスタマー ケア センター
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