イギリスから訪日したジャックさん【写真:Hint-Pot編集部】
今年は6月から、季節外れの暑さが続いています。日差しの厳しい日中は街を行きかう人々の姿が減る中、ひときわ目立つのが外国人観光客です。そんな中、イギリスからやって来たジャックさんは日本で“おなじみの光景”に驚かされたそうです。詳しい話を聞きました。
◇ ◇ ◇
この猛暑の中… 「何か売っているのかと思いました」
ジャックさんは、英国チェルトナム近郊から初来日。滞在は3週間で、東京に来る前は沖縄でスキューバダイビングを楽しみました。「今回の旅行では京都、大阪、名古屋にも行きました」と各地の観光スポットを満喫したそうです。
英国から見れば、日本ははるか東方の国にあたります。言葉や食べ物もまったく異なりますが、ジャックさんは、抵抗なく受け入れることができたそうです。
「日本は初めてだけど、すごく気に入ったよ。みんな礼儀正しいし、安全だし、ごはんもすごくおいしいし、街もきれいで本当に素晴らしい」
世界的にも評価の高い日本のおもてなし。そして、旅先でのちょっとした心配りに、大きな感銘を受けたといいます。
そんなジャックさんが別の意味で驚かされたのは帰国を4日後に控えた日のことでした。
新宿駅前を通りかかると、ある光景を見て、立ち止まりました。
「最初はチラシを配っているから、何か売っているのかと思いました」
人々が広場に集まり、視線の先には何ごとか叫んでいる人がいます。ジャックさんは近くにいた関係者に質問。それが、日本の選挙だと告げられると、一層不思議そうに眺めました。
「ちょっとびっくりしました。武蔵境駅の前だったかな? そこでもスピーチしていました。イギリスとかヨーロッパでは、こんなふうに路上で演説することはあまりないです。普通は屋内でやるし、路上だと安全面が心配になることもあります」
英国では、拡声器をつけた選挙カーが住宅街を巡回したり、駅前に横付けされることもありません。
しかも、この暑さの中です。各候補が激しい選挙戦を展開していても、日中はどこも聴衆集めに苦戦している様子が伝わってきます。
それでも、街頭演説には候補者の訴えを聞こうと、耳を傾ける人の姿がありました。候補者の声に対し、拍手や歓声でリアクションを返しています。そのことも、ジャックさんには興味深く映りました。
「本当に熱心で情熱的」でも…英国とは比較にならない投票率
「例えば、ロンドン市長(選)には、私たちはあまり関心がありません。実際、投票しない人が多いです。でも、首相とか国のトップには関心があります。国の選挙だと、投票率は70%くらいかな? 結構高いです。でも、市長選とかになると、もっと低くて50%くらいです」
日本と比べると十分高い投票率ですが、それを凌駕するくらいの熱気を感じ取った様子でした。
日本の候補者は街頭演説が終わると、フェンスの周りを練り歩き、聴衆と次々にハグしたり、スマートフォンで記念撮影をかわしていきます。簡易的な持ち物検査は行っていますが、候補者と聴衆の距離があまりにも近く、英国では見たこともない選挙の形でした。
「でも、いいと思います。日本だと人が集まって、拍手したり応援したり、すごく活気がある」
街頭演説の片づけが始まったころ、ジャックさんの前では、ビラを配っていたサポーターたちが集まり候補者を囲んで何度も気勢を上げていました。
ジャックさんは「本当に熱心で情熱的だよ。たぶん、あの人たちは支持者なんだと思う。あの女性(候補者)は人気あるの?」と感心しつつも、頭の中はハテナでいっぱい。スーツ姿の警察官や警備員の数も気になり、「なんであんなに警備が多いの?」と、質問が止まらなくなっていました。
日本では、若者の投票率の低さが課題の一つになっていますが、英国では、「若い人たちは投票に行きます。逆に年配の人ほうが投票しなかったりする」とのことです。選挙カーなど使わなくても、重要な選挙では投票率が高い英国。「みんなあんまり政治家が好きじゃないんだ」という中で、どのように国民の意識を高めているのか、日本人としては、大いに気になるところです。
東京で“選挙の常識”がひっくり返るような衝撃を受けたジャックさん。この日の出来事は、いい意味で、日本旅行の思い出の一つになったことでしょう。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)
WACOCA: People, Life, Style.