トランプ米政権がスイスに対して新たに課す懲罰的な関税は、スイス国内に衝撃を与えている。中でも驚きを隠せないのが、スイス製腕時計の売買に関わる人々だ。
スイスを拠点とする高級腕時計コンサルタントのオリバー・R・ミュラー氏は、今回の関税がスイスの時計業界に与える打撃に憤る。同業界はここ数年、中国市場での販売減を補う形で米国の需要に依存していた。
ミュラー氏はインタビューで、「すでに多くの困難を抱える中でさらに重荷を増やす」と非難した。
同氏の試算では、米政権が発表したスイスからの輸入品に対する39%の関税がロレックスやパテックフィリップ、オメガなどの人気ブランドに転嫁された場合、米国内の小売価格が12-14%上昇する可能性がある。これにより、ステンレス製のロレックス「サブマリーナ」は販売価格9500ドル(約140万円)に約1000ドルの上乗せが発生することになる。
ゴルフ中のトランプ米大統領
Photographer: Patrick Semansky/AP Photo
ロレックスなどの高級腕時計は、長年にわたり富の象徴とされてきた。トランプ氏もかつてロレックスをはじめとする高級腕時計を着用している姿が確認されており、同氏の家族や政権関係者もスイス製の腕時計を公の場で身に着けていた。
こうした背景もあり、今回の39%の関税は、業界関係者の間に強い困惑をもたらした。
米政権関係者によると、今回の関税措置は腕時計業界を標的にしたものではなく、医薬品が米国とスイスの貿易不均衡の主因であるとされている。米国には高級腕時計の大規模な製造業は存在しない。
トランプ氏は昨年、自身の名前を冠した高級腕時計シリーズを発表している。その中には、腕時計の複雑機構で最高峰の一つとされる「トゥールビヨン」を搭載した10万ドルの高級モデルも含まれている。
トランプ氏の高級腕時計モデル
Source: gettrumpwatches.com
原題:‘He Likes Swiss Watches!’: Trump Shocks Horology With Tariffs(抜粋)
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